研究課題/領域番号 |
16K14522
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
沖部 奈緒子 九州大学, 工学研究院, 准教授 (30604821)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒ素 / 製錬廃液 / 鉄酸化細菌 / ヒ素酸化酵素遺伝子 / 遺伝子組み換え |
研究実績の概要 |
ヒ素含有鉱物の製錬プロセスにて多量に生成する高毒性の亜ヒ酸含有廃液処理の課題が世界的に拡大している。本申請では、亜ヒ酸処理のためのバイオプロセス開発を目的とし、ほぼ未開の研究領域といえるバイオマイニング微生物の遺伝子工学的手法の開発に着手することとした。具体的には「(i) まず形質転換(宿主・ベクター)系の開発を行い、(ii) ヒ素酸化能を付与・増幅することにより、(iii) 最終的に超好酸性・中等度好熱性の高効率型ヒ素酸化細菌株を創製する」ことを目的とした。 H28年度は、まず、Acidimicrobium属およびAcidithiobacillus属の菌株を選択・入手し、まずこれらを宿主とした場合の形質転換系の開発と最適化を試みた。ベクターには広宿主域ベクターを用いた。宿主細胞培養用の固体培地の最適化、エレクトロポレーションによる遺伝子導入法の条件最適化、エレクトロポレーション後の蘇生手順および蘇生培地についての検討を行っている。現在、まだ形質転換株が得られていないため、引き続き、条件検討を進めている。 同時に、ヒ素酸化細菌の染色体DNAを入手し、ターゲットとするヒ素酸化酵素遺伝子群を増幅しクローニングを行った。対象とする遺伝子群配列が長く、形質転換効率が非常に低いため、さらなる条件検討を進めている。 上記に成功し次第、ヒ素酸化酵素遺伝子群を高宿主域ベクターにつなぎ、Acidimicrobium属およびAcidithiobacillus属細胞の形質転換を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象とするAcidimicrobium属およびAcidithiobacillus属細胞の形質転換法が未知であり、ゼロからの条件模索であること、また、クローニング対象とするヒ素酸化遺伝子群のDNA配列領域が長く、サブクローニング効率が低いことが、最大の理由として挙げられる。しかしながら、本年度も複数の学生に従事させることで、条件検討をスピードアップしていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
〇Acidimicrobium属およびAcidithiobacillus属のエレクトロポレーションによる形質転換の条件検討を引き続き進める。個々の細菌株について学生を割り当て、条件検討を加速化する。継続して、固体培地の最適化、エレクトロポレーションによる遺伝子導入法の条件最適化、エレクトロポレーション後の蘇生手順および蘇生培地を含め検討を行う。 〇大腸菌へのサブクローニングについて、対象遺伝子群領域を限定し、配列をやや短めにして形質転換効率アップを図る。これによって、サブクローニングをできるだけ早く完了し、遺伝子領域の広宿主域ベクターへのクローニングへ移行したい。
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