持続的銅資源確保の為には鉱石中の毒性ヒ素(As)に由来する環境問題を克服する必要がある。微生物のAs(III)酸化能の増強は1つの手法である為、未開の研究領域であるバイオマイニング微生物の遺伝子工学手法の開発に挑戦した。本研究では、ヒ素酸化細菌 Thiomonas arsenitoxydans 3As 由来の酵素タンパクarseniteoxidaseをコードする遺伝子群を広宿主域ベクターpJRD215 cosmidに挿入し、条件に適した中度好熱・超好酸性菌に導入することを目指した。As(III)酸化酵素遺伝子(aioA、aioB)発現ベクターであるpJRD215_ aioABの構築は完了した。その後、電気穿孔法、ヒートショック法、接合法により複数の超好酸性菌株の形質転換を試みたが、まだ分子生物学的に遺伝子が組換えられたことは確かめられておらず、今後は特に接合法に焦点を当て検討を行なっていく必要がある。そもそもこれらのバイオマイニング微生物自身が高い抗生物質耐性を有すること、固体培地でのコロニー形成が安定しないこと、Fe等による細胞表面の性状により外来遺伝子の導入が難しいことなどの課題が多々見出された。これまでバイオマイニング微生物の遺伝子組み換え研究領域がほぼ未開拓である理由はこれらの課題によるものかもしれない。今回の3年間の研究期間において抽出した諸々の課題について、引き続き独自に基礎研究を続けていきたい。
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