研究実績の概要 |
ECHを利用したトカマク非誘導生成時の電子速度分布時間発展を計測することを目的として,ヘリウム原子発光線の偏光観測にもとづく電子速度分布計測法の開発に取り組んだ.研究の初年度である本年度は以下の2課題を実施した.
(1)高精度・高時間分解での偏光計測が可能な偏光変調分光システム開発:集光系(光弾性変調器(PEM)1台,λ/4板2個,直線偏光子1個,対物レンズ1個),光ファイバ,分光器,光電子増倍管からなる単一波長でストークスパラメータI, Q, Uの計測が可能なシステムを先行研究で開発した.このシステムに対して,以下の(a), (b)の改造を加えた.(a)紫外から近赤外域の任意波長の発光線に対して全てのストークスパラメータI, Q, U, Vを計測するために集光系をPEM2台,直線偏光子1個,対物レンズ1個からなる光学系に変更した.(b)光量損失を低減するために分光器と光ファイバの接続部分にFマッチング光学系を導入した.実機に比べて発光強度が1桁程度小さいヘリウムDCグロー放電管からの発光を計測し,発光強度が比較的大きい23P-33D線(588 nm),21P-31D線(668 nm)に対しては,時間分解能10 msの場合にストークスパラメータを誤差1%以下で計測できることを確認した.
(2)基礎放電プラズマ実験装置を用いた電子速度分布推定の原理検証実験:トカマク生成時に近いパラメータのプラズマを生成可能なカスプ磁場中のECR放電装置を用いてヘリウム原子発光線の偏光を計測した.ヘリウム圧力を4.8-67 mPaの範囲で変化させながらヘリウム原子21P-31D発光線(667.8 nm)の偏光を計測した結果,23 mPa以下の条件でECR面付近での磁場ベクトルに垂直な方向の直線偏光が観測された.偏光度は圧力の低下と共に増加し,4.8 mPa時に約8%に達することが分かった.
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