29 年度は、28 年度に構築した高時間分解能・定常計測システムを用い、QUEST プラズマ実験にてプラズマ中電子からの電子サイクロトロン輻射(ECE)計測を行う予定であった。プラズマを加熱・電流駆動する場合、通常、遮断密度を超えてしまうと、入射電磁波はプラズマ内部に伝搬できなくなる、しかし、磁場とのなす角が一定の値で入射される場合、入射電磁波は静電波にモード変換してプラズマ中への伝搬できる。プラズマからの輻射波観測はこの逆過程で、通常、真空域へと伝搬できない静電波が、条件が満たされると電磁波へとモード変換されて外側に伝搬し観測される。遮断密度を超える高密度プラズマでも加熱・電流駆動できる条件を、輻射波観測で探査することが主な目的であった。しかし、「窓」探査の対象となる遮断密度を超える高密度プラズマが生成できず、「窓」探査の輻射観測は行えなかった。 29 年度、ビームフォーミングに加え、Capon法によるアダプティブアレイ解析を行えるようようになった。これまでより、画期的に観測源位置を細かく同定でき、2つの「窓」(輻射波源位置)も区別して同定できるようになった。現在、さらにより詳細な複数の「窓」の同定を目指し、新たなミュージック法による解析を進めている。 29 年度、さらに多素子のフェーズアレイアンテナでアダプティブアレイ解析することを目指し、これまでの導波管アンテナでなく、微小ループアンテナを用いたフェーズアレイアンテナによるアダプティブアレイ解析を目指した。微小アンテナを用いることで、導波管アンテナに比べ、多素子化が容易となる。微小アンテナからの放射電界・位相特性で、解析解、シミュレーション解、低電力試験で良い一致が得られた。2つの微小ループアンテナを用いて、伝搬距離に応じて位相遅延が正しく計測できることを示した。また、干渉が生じる2つのアンテナ間距離も明らかにした。
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