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2016 年度 実施状況報告書

不飽和帯における人工バリア変質抑制機能を活用したコンパクト地層処分システムの創成

研究課題

研究課題/領域番号 16K14532
研究機関東北大学

研究代表者

新堀 雄一  東北大学, 工学研究科, 教授 (90180562)

研究分担者 千田 太詩  東北大学, 工学研究科, 助教 (30415880)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード原子力エネルギー / バックエンド / 放射性廃棄物 / 処分システム / 核種閉じ込め
研究実績の概要

本研究は,不飽和帯(地下水により満たされていない領域)でのベントナイトからなる人工バリアの変質過程についての検討を行い,より多くの廃棄体を限られた処分場面積に定置できることを示すことを目的とする。地層処分では,廃棄体の定置から処分場の閉鎖までに100年近い期間を要し,その間の通気は処分場周辺に不飽和帯を形成する。一方,発熱体であるガラス固化体の定置間隔は,地下水による冠水状態を前提にして,人工バリアの化学的変質を加速させない100℃未満になるように設計されてきた。しかし,不飽和帯により人工バリアへの地下水自体の流入が制限されれば,100℃以上でも人工バリアの変質は抑制され,廃棄体の定置間隔を小さくできる。
本年度は,当初の予定通り「不飽和帯の同定および冠水期間を評価する数理モデル」の検討を行った。流動系実験装置として主にケイ砂を用いた充填層を用い、それを一度純水により飽和させた後、重力に従って排水させることにより, 初期の不飽和状態を形成させた。この状態(初期状態)から所定圧力差において連続的に模擬地下水を供給し,流入出口における流出流量を測定した。また、内部の飽和率の分布を重量法およびX線CTを用いて把握した。さらに、所定の段階においてトレーサー物質(セシウムおよびストロンチウム)を抽入し、不飽和層からの各々のトレーサー応答を得た。その結果、本実験手順により充填層内の気泡は局所的に連続的な層を形成することなく、均一に分布していることを確認した。また、トレーサー応答解析にあたり、不飽和帯における物質移行の数理モデルを構築し、見かけの収着分配係数を評価した。さらに、初期状態から冠水が始まり定常になるまでに要する時間は、本実験系の場合には、空間時間(間隙体積を流量で割った値)にほぼ近似できることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究を通じ、X線CTを利用して充填層内の気泡の空間分布をも把握することができた。この情報は、従来の重量法では得られないもので、間隙サイズレベルの気泡の存在状態を定量化する。このことにより、充填層内に連続した気相の層を形成していないことが確認できたことは、不飽和帯におけるCs等の収着分配係数が見かけ上小さく評価されることと矛盾しない。すなわち、トレーサーを含む流体が気泡を迂回する効果は、固相との接触を制限することを意味し、結果的に収着分配係数を小さく見積もることとなる。この現象は、気泡の分散状態に大きく左右される。さらに、人工バリアのベントナイト(主成分はモンモリロナイト)の変質鉱物であるイライトを用いて、処分場構築に多量に用いるセメントによって過飽和となったケイ酸の析出挙動の実験も開始でき、不飽和帯のみならず、ケイ酸の析出によってさらに流路の透水性が低下することを確認できた。

今後の研究の推進方策

次年度も、当初の予定通り、課題1の検討を継続するとともに、「スメクタイトのイライト化の反応速度と冠水に至る速度(期間)の比較検討」(課題2)および「不飽和帯における廃棄体周囲温度の推移の評価」(課題3)を行う。課題2ではベントナイト(主成分:スメクタイト)のイライト化の反応速度を既往の研究を基に整理し、課題1によって評価された冠水に至るまでの期間においてベントナイトへのカリウムイオンの供給速度を算出することにより,上述の反応速度と比較する。また、反応速度は温度に依存することから、課題3では,廃棄体の設置間隔をパラメータにして,不飽和帯における廃棄体周囲温度の推移を評価する。また次々年度では、当初の予定を若干変更し、本年度予察的に実施した「イライトへのケイ酸の析出挙動の評価」を課題4とし、その止水性を評価する。これらの検討により不飽和帯の変質抑制機能を考慮した廃棄体間隔の算出(課題5)を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Flow Rate Dependency of Permeability Changes with the Deposition of CSH under the Highly Alkaline Ca-rich Condition2017

    • 著者名/発表者名
      Daiki Kurata, Yuichi Niibori, Taiji Chida
    • 雑誌名

      Proceedings of WM2017 (HLW, TRU, LLW/ILW, Mixed, Hazardous Wastes & Environmental Management)

      巻: Paper No. 17175 ページ: 1-9

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Estimation of Cs Migration under an Unsaturated Condition by Parallel-plate Experiments and 2D Advection-dispersion Model2017

    • 著者名/発表者名
      Takumi Nemoto, Takenori Ozutsumi, Taiji Chida, Yuichi Niibori
    • 雑誌名

      Proceedings of WM2017 (HLW, TRU, LLW/ILW, Mixed, Hazardous Wastes & Environmental Management)

      巻: Paper No. 17188 ページ: 1-10

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 浅地中の不飽和層における地下水圧力の変化による核種移行挙動の評価2017

    • 著者名/発表者名
      小堤健紀,新堀雄一,千田太詩
    • 学会等名
      第2回次世代イニシアティブ廃炉技術カンファレンス
    • 発表場所
      東京都目黒区大岡山(東京工業大学)
    • 年月日
      2017-03-07
  • [学会発表] 地層処分場近傍高アルカリ領域における亀裂変質と核種移行との関係2016

    • 著者名/発表者名
      倉田大輝,田代龍,新堀雄一,千田太詩
    • 学会等名
      日本原子力学会 第40回東北支部研究交流会
    • 発表場所
      宮城県仙台市(東北大学)
    • 年月日
      2016-12-12
  • [学会発表] セシウムおよびストロンチウムの移行挙動に及ぼす液相飽和率変化の影響2016

    • 著者名/発表者名
      小堤健紀,新堀雄一,千田太詩
    • 学会等名
      日本原子力学会
    • 発表場所
      福岡県久留米市(久留米シティプラザ)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09
  • [学会発表] マイクロフローセルを用いたCa含有高アルカリ性地下水と花崗岩表面の相互作用の評価2016

    • 著者名/発表者名
      林貴行,倉田大輝,新堀雄一,千田太詩
    • 学会等名
      日本原子力学会
    • 発表場所
      福岡県久留米市(久留米シティプラザ)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09

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公開日: 2018-01-16  

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