研究課題/領域番号 |
16K14534
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
若狭 雅信 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40202410)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 同位体濃縮 / 磁気同位体 / 磁気共鳴 / 磁場効果 / ラジカル / スピンダイナミクス |
研究実績の概要 |
特異なナノ反応場を用いた反応ダイナミクスの制御: SDSなどのミセルはケージ効果が大きく,内部粘性(~20 cP)も高いので,一重項ラジカル対の反応が遅くなるだけでなく,マイクロ波に共鳴しないラジカル対のスピン緩和も起こりやすくなる。そこで本年度は,粘度は低いがケージ効果を有するイオン液体を利用して,ケージの強さ,大きさ,および内部粘性に注目してベンゾフェノンの反応に対する磁場効果とマイクロ波効果を検討した。 4級アンモニウムをカチオン,TFSAをアニオンとするイオン液体は,4級アンモニウムの4つのアルキル基の長さによって,ケージの強さを自在に変えることができる。さらに興味深いことに,磁場効果をプローブにした我々の研究結果から,内部粘性はアルキル基の鎖長を変えてもあまり変化せず2~5 cPを保つことがわかっている。そこで,TMPATFSAを用いて,BPとフェノール(PhOH)の反応に対する磁場効果をまず試みた。 3BP* + PhOH → 3(BPH・・OPh) → Benzopinacol(散逸生成物),ケージ生成物 その結果,生成するベンゾフェノンケチルラジカルの散逸収量は大きな磁場効果を示すことがわかった。次にに,散逸生成物であるBenzopinacolの収量に対する磁場効果を調べたところ,磁場効果は示すが,その大きさはケチルラジカルに比べて小さいことがわかった。これは,散逸したケチルラジカルの反応が遅いためによると考えられる。これらのことより,散逸ラジカルの反応性についても考慮して反応系を選択する必要があることがわかった。さらに,この反応に対するマイクロ波効果についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ秒パルスNd:YAGレーザー(10mJ/pulse, 10 Hz)用いて,電子スピン共鳴装置(Bruker ELEXSYS 580パルスESR,既存)の共振器中に設置した,石英フローセル中の試料を光照射して反応を行った。Brij35をミセルとして用いた場合,発生するラジカル対(存在比が大きい12Cを含む)に共鳴するパルスマイクロ波を,1 kWのTWT(進行波管)で増幅し,レーザー光と同期させながら照射した後,散逸生成物およびケージ生成物の収率をGPCカラムクロマト(カラムを本研究で購入)で求めた。励起三重項ベンゾフェノンの反応では,マイクロ波によってケージ生成物の収率が21%増加することがわかった。さらに,ケージ生成物の収率はマイクロ波の強度によって8-21%と変化することも分かった。 生成物を分取,濃縮し,炭素のNMRを用いて,生成物中の炭素13/炭素12の同位体比を調べたところ,予備的実験として,共鳴マイクロ波によって同位体比が変化するこがわかった。ただ,ラジカル対の反応が遅いために,スピン緩和が起きており,その変化は予想していたものより小さかった。さらに,イオン液体を用いた反応系についても磁場効果とマイクロ波効果を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
特に大きな問題はないので,今後も計画通り研究を遂行する。
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