研究実績の概要 |
1.同位体比測定法の確立:種々の反応で生成する散逸生成物およびケージ生成物に対して,エレクトロスプレーイオン化飛行時間質量分析計を用いて,13C /12C同位体比の高精度測定を試みた。磁気共鳴を用いた13Cの同位体濃縮では,濃縮に関わる炭素は主にラジカル中心の炭素である。よって,ラジカル中心以外に多くの炭素原子を持つ生成物では,同位体比測定が困難になることがわかった。そこで,TOF-MSのイオントラップ法を用いて親イオンをトラップし ,さらに希ガス等との衝突によりフラグメント化させることで同位体比測定を検討した。 2.選択的同位体濃縮:光反応により発生するラジカル対のうち,12Cもしくは13Cどちらか一方の同位体を含むラジカル対に共鳴す るパルスマイクロ波を照射して,選択的同位体濃縮を行った。具体的には,13Cをラジカル中心にもつラジカル対は,I = 1/2なので共鳴位置は分裂し,12Cとは異なる。ここで,中心の12Cを含むラジカル対に選択的にマイクロ波を照射し,スピン緩和させる。生成した直後の三重項ラジカル対はT+1, T0, T- 1状態に等しく分布しているが,スピン変換(T0- S)が速い(~10 ns)ので,反応ダイナミクスを制御すると,T0状態のラジカル対だけをケージ生成物に変換することができる。ここで,12Cを含むラジカル対のT+1, T-1状態に共鳴するパルスマイクロ波を照射し,選択的にT0状態にスピン緩和させると,同様にケージ生成物に変換される。結果として,13Cを含むラジカル対は散逸生成物になるので,散逸生成物中に13Cが濃縮される。本研究ではマイクロ波効果を最適化した反応について,共鳴パルスマイクロ波で選択的同位体濃縮を行い,得られた生成物の同位体比をESI-TOF-MSで測定を試みた。
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