従来の同位体濃縮法(遠心分離,ガス拡散,蒸留など)の多くは,同位体の質量数の差によっている。本研究では同位体濃縮には一見関係ないと考えられる,同位体の磁気的性質の差に着目し,同位体濃縮に挑戦した。すなわち,これまでに例のない磁気共鳴を用い,(1)磁場中での共鳴パルスマイクロ波による選択的なスピン緩和と,(2)特異なナノ反応場による反応ダイナミクスの制御によって,13C, 29Si,および33Sなどの同位体濃縮の実現を目指した。この質量数の差によらない新しい原理に基づく同位体濃縮は,同位体濃縮法としての新しい展開が期待されるのみならず,重原子の同位体濃縮に新たな道を開く。
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