研究実績の概要 |
ピリジンカルボン酸イオンアームまたはピリジンカルボン酸エステルアームを2つもつ環状型配位子1,2を合成した。ピリジンカルボン酸イオンアームを持つ配位子1とはバリウム、ストロンチウムの錯体を合成した。また、ピリジンカルボン酸エステルのアームを持つ配位子2とは、バリウム、カルシウム、セシウム、ルビジウムの錯体の合成に成功した。配位子1,2をもつバリウム錯体の単結晶X線分析の結果、アーム部分がカルボン酸イオンの場合、カルボン酸エステルの場合に比べて、アーム部分の酸素原子との結合距離が0.2オングストローム短いことが分かった。また、ストロンチウムとカルシウムが配位した錯体の構造と比較したところ、配位数が11であったが、カルシウムでは、環部分の窒素の配位が見られず、配位数が8であり、錯体構造の安定性はバリウム等に比べて低いことが予想された。実際、配位子1および2を用いた場合のカリウム、ストロンチウム、バリウムとの錯形成の安定度定数を測定したところ、安定度定数は、配位子1, 2ともにカルシウム、ストロンチウム、バリウムの順で大きくなった。DOTAでは、安定度定数がカルシウム、ストロンチウム、バリウムの順で小さくなるため、この傾向は、DOTAとは逆の傾向であることが分かった。これは、配位子のサイズの問題と考えられる。さらに興味深いことに、配位子1, 2ともにカルシウム、ストロンチウム、バリウムのイオン半径の逆数と安定度定数の対数とは直線関係があることが分かった。また、全ての金属イオンについて、配位子1のほうが配位子2に比べて安定度定数が大きかった。これは、アーム部分がカルボン酸イオンの場合のほうが、金属イオンとの結合距離が短くなったことが要因と考えられる。ラジウムと配位子1との反応は、ラジオTLCを用いて分析した。その結果、高収率で配位子1が配位した錯体が生成していることが分かった。
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