研究課題/領域番号 |
16K14539
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
阪上 宏樹 九州大学, 農学研究院, 助教 (40604822)
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研究分担者 |
清野 智史 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90432517)
津田 哲哉 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90527235)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射線 / ナノ材料 / 木材 / イオン液体 / 防腐 / 保存 |
研究実績の概要 |
木材は低エネルギーで生産可能なサスティナブル資源として注目されているが、生物材料がゆえに腐る・燃える・割れる・変形する。本研究では放射線の透過能に着目し、照射するのみの簡単なプロセスで誘起される化学反応によって木材内部に金属ナノ粒子、高分子、イオン液体の三種の特性を同時に付与したハイブリッド改質材料を開発し、高耐朽性エコマテリアルの創製に挑戦する。 平成28年度は薬剤の主剤となるイオン液体[BuVyIm]Iの最適条件を検討した。[BuVyIm]Iは防腐性・重合性を有したイオン液体であるが粘性が高く、高コストなため、低濃度の使用が望ましいが、その反面、性能の低下が懸念される。そこで防腐効果を有する濃度を検討するため、5%、10%、30%、50%、100%濃度の[BuVyIm]Iを滴下した2%濃度の麦芽寒天平板培地上で木材腐朽菌オオウズラタケを培養したところ、濃度に準じた生育阻害がみられたた。次に0.5%と1%濃度の[BuVyIm]Iを含んだ2%濃度の麦芽液体培地中でオオウズラタケを振とう培養したところ、0.5%濃度では大幅な成長抑制が、1%濃度では生育不可能だった。次に、重合性能を検討するため10%および30%濃度の[BuVyIm]I、および1%、2%、3%濃度の架橋剤(TMPTA)を添加したこれらの[BuVyIm]Iを含浸させてγ線照射で重合処理を施した木材を、JIS K 1571を参考に溶脱試験、および腐朽試験を行った。溶脱試験の結果、少量の[BuVyIm]Iが残留しており、TMPTAの濃度に準じてBuVyIm]Iと架橋剤が残留した。溶脱試験後の木材を腐朽試験した結果、TMPTAを添加しない10%濃度の[BuVyIm]Iおよび3%濃度のTMPTAを添加した10%濃度の[BuVyIm]Iを含浸させたいずれの木材でも高い耐久性能を有する事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成28年度は防腐効果有する[BuVyIm]Iの最適な濃度条件の検討、および濃度の違いによる重合性能と架橋剤添加の効果を検討し、最適条件を求めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究計画において、[BuVyIm]Iの最適条件が10%濃度であり、架橋剤が不要であることが分かった。従って、平成29年度はこの条件で銅ナノ粒子の生成を試みる。まず、木材を使用せず、試験管内の理想的な環境下で溶液中に銅ナノ粒子が生成する条件を検討する。銅ナノ粒子の評価は主にFE-SEMおよびTEMで行う。試験管内で銅ナノ粒子が生成する条件が明らかになれば、次のステップとして木材中で銅ナノ粒子の生成を試みる。木材中の銅ナノ粒子生成の評価も同様にFE-SEMおよび木材を薄切化してTEMで行う。木材中で銅ナノ粒子の生成に成功したら、最終評価としてJIS規格に準じた改質木材の性能評価を行う。評価の方法は降雨を想定した溶脱試験、防腐性能試験、寸法安定性試験、各種強度試験、促進耐侯性試験を行い、特許を取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の使用計画では、仮に研究が大幅に進展しても研究費が使用できるように平成29年度計画の研究費の一部を含めていたが、実際には計画通りの進捗となったため、その金額が次年度使用額となった。具体的には平成28度はイオン液体の合成や分析等に関する研究を、平成29年度では銅ナノ粒子の生成に関する研究を行う計画だったが、平成28年度の研究費にも銅ナノ粒子の生成に関する費用を一部含めていた。しかし、平成28年度では銅ナノ粒子の生成に関する実験を着手できなかったため、当初の計画通り平成29年度に行う。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は主に銅ナノ粒子の生成に関する研究に研究費を使用する予定である。平成28年度の繰り越し分は銅ナノ粒子を合成するために必要な試薬と器具の購入、および銅ナノ粒子の生成に使用するγ線照射の依頼費用に充てる。平成29年度助成金は、平成28年度と同様にイオン液体の合成に関わる費用に加えて、銅ナノ粒子の生成を評価するための分析機器の使用料金と学会等での成果の発表に充てる予定である。
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