再生可能エネルギーのさらなる普及拡大のためには,発電電力や余剰電力を高いエネルギー密度をもつ化学物質(例えばアンモニア)に変換して貯蔵する,ケミカルストレージが有効である。貯留されたアンモニアを利用する際,脱水素する反応器が必要となる。しかし,従来の触媒熱分解法のみでは,燃料電池用の高純度水素を得ることは困難である。本研究では,水素分離膜を高電圧電極とする独創的な大気圧プラズマメンブレンリアクター(PMR)を着想し,低温・無触媒でアンモニアから高純度水素を効率的に製造するデバイス開発を目的とする。 外径42mm(厚さ2mm),長さ400mm の石英管内に高電圧電極を挿入した円筒型構造のプラズマリアクターを設計・製作し,アンモニアのプラズマ分解水素生成挙動を確認したうえで,高電圧電極に水素分離膜を溶接したPMRで水素生成挙動を調べた。アンモニア濃度,流量,プラズマ印加電圧をパラメータとした。PMRでは水素生成量が増大し,アンモニアプラズマ分解反応における逆反応が抑制されることがわかった。 水素生成量を増大するために,PMRのプラズマ生成空間に吸着剤を充填し,アンモニアの分解促進および水素ラジカルの滞留時間増大を図った。吸着剤の種類によって異なるが,最大330 L/hの水素生成量が得られ,消費電力対水素生成量で比較すると,従来の水電解水素製造法の約3倍の性能が得られ,今後,実用化に向けて取り組む方針である。
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