本研究では,EWOD(Electro Wetting-on-Dielectric)現象を利用して液界面形状を変化させ,太陽光を光ファイバーや光ダクトに有効に導入する太陽光採光器の開発が研究目的である.EWOD現象利用により,現状技術の機械的追尾構造と比較して,コンパクトで簡易な太陽集光器が期待できる. 具体的な研究内容として,一辺3~10mmの矩形容器,四角錐台容器に透明液体を2層,3層とする採光セルを想定し,セル下方設置の光ファイバーに有効入射する光割合を求める計算的研究を実施した.3層は水,シリコン油,イオン液体である.界面形状と光屈折特性を評価する際の計算パラメータは多いが,今回のパラメータは,液層数,液体積比,セル底面寸法,セル縦横比とした.初年度に導いた解析計算手法により,2年度目に矩形2層セルの解析結果を得た.入射角30°において最大到達率7%,太陽光集光密度比1.8と低い値が明らかとなった.そこで矩形3層セルを検討し,底辺4.5㎜,高さ9㎜,入射角20°以下で最大到達率25%,太陽光集光密度比3~5が得られることを明らかにした. 最終年度と延長年度は,さらに高い到達率を期待し,四角錐台容器に注目した.円筒座標系モデルを作成し,側壁傾斜角,セル寸法,液体積比の効果を解析した.四角錐台3層セル入射角7°の際,最大到達率51%,太陽光集光密度比10.3を得ることができた.四角錐台3層セルの最大値は矩形容器の2倍程度と大きく,入射許容角は5°程度小さい解析結果を得た. EWOD現象による界面形状変化を利用し,太陽光をプリズムのように曲げる効果,レンズのように集光する効果を併せ持つ太陽採光器の基本特性を明らかとする成果を得た.今後,形状,液条件等の残された多くのパラメータ解析が必要なこと,実際気象データを加味する多数個セル設置検討により,今後実用化への展開が期待できる.
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