研究課題/領域番号 |
16K14550
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
井上 徳之 中部大学, 超伝導・持続可能エネルギー研究センター, 教授 (20249965)
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研究分担者 |
細田 奈麻絵 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, グループリーダー (50280954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペルチェ素子 / ビスマステルル / 直接接合 / 電流リード / 高温超電導直流送電 / 低温工学 / 表面研磨 / 材料試験 |
研究実績の概要 |
本研究は、超電導送電ケーブルに使用する「ペルチェ電流リード」の性能向上のため、極低温で剥離しない異種材料接合の実現を目指している。ペルチェ素子とアルミニウムなどの配線の常温直接接合の例はこれまでにはなく、性能の飛躍的向上が期待される。実現のためにはナノレベルの表面研磨を含む接合条件の最適化が必要である。 ペルチェ素子とアルミニウムの接合材料として、Bi2Te3(N型)とBi0.3Sb1.7Te3(P型)と高純度多結晶アルミニウムを用いた。アルミニウムは直径3mmで長さ5mmの接続部と直径10mm長さ10mmの保持部分に切り出し、接触面を曲率半径25mmに加工し接合材料とした。Bi2Te3(N型)とBi0.3Sb1.7Te3(P型)は6mm×6mm×6mmのサイズに加工し接合用材料として用いた。アルミニウムは、鏡面加工処理を施す目的で、研磨紙による機械研磨、アルミナ砥粒(5µm, 1µm)を用いたバフ研磨を行なった。各工程においてアセトンとエタノールで超音波洗浄を行なった。最終研磨として過塩素酸(30%)とエタノール(70%)を用いた化学研磨を273Kで行った。研磨後は、研磨歪みを除去するため真空加熱炉を用いて357Kで2時間アニーリングを行った。アルミニウムの酸化皮膜の除去については、真空中でアルゴン高速原子を1.5kVに加速し照射する方法を採用した。 接合試験用治具の設計・製作を行い、接合強度評価用の引張り試験機の改造と治具の設計・製作を行い、接合試験及び評価試験の環境を整えた。また、極低温力学特性評価用の冷却層の設計を行い、断熱構造体を製作し、接合実験の環境と評価試験の環境を整えた。本年度のもう一つの課題であったビスマステルルの研磨は、ビスマステルルの毒性が高いため研磨環境の問題で実施が遅れているが、研磨条件の検討は行ったので次年度に実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
接合試験用治具の設計・製作は順調に行い、接合強度評価用の引張り試験機の改造と治具の設計・製作を行い、接合試験及び評価試験の環境を整えた。また、極低温力学特性評価用の冷却層の設計を行い、断熱構造体を製作し、接合実験の環境と評価試験の環境を整えた。しかしながら、ビスマステルルの研磨については、ビスマステルルの毒性について従来の研磨環境での作業の安全性を確認する必要があり、慎重に対応したため実施が遅れている。研磨条件についての検討は行っっており、次年度はこれを実施する。
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今後の研究の推進方策 |
研磨と接合の実施: ビスマステルルは、鏡面研磨条件として研磨紙 (#400, #800, #1500 and #2400)で研磨を行い、ダイヤモンド砥粒(9 µm , 3 µm)で研磨を行い、最終研磨としてコロイダルシリカで7分間研磨を行う。ビスマステルルは毒性が高いため、研磨環境を考慮し実施する。ビスマステルルの接合前の表面活性化はアルゴン高速原子線の照射により実施し、最適条件を検討する。前年度作成したサンプルホルダーを用いて、接合実験を行い、接合強度の評価として引っ張り試験を実施する。引っ張り試験は、常温と極低温で行い評価する。 接合部の特性試験: 接合したペルチェ素子と配線材料(アルミニウム)の界面の微細組織の構造について、電子顕微鏡およびXPS等を用いて評価する。接合部分については、常温での機械的特性、電気特性等を評価するとともに、低温での機械的特性・電気的特性の評価を準備する。機械的特性の測て装置として、H28年度に引張り試験装置を開発している。 電流リードの開発: 開発した接合部をペルチェ電流リードとして施策するためには接合面積を大きくした接合構造を製作することが求められる。最終的には、極低温での通電時におけるペルチェ電流リードの熱侵入量の測定を目指している。最終年度に接合構造を用いたペルチェ電流リードの熱侵入量と電気特性の評価を行うことを可能とするため、接合面積を大きくするための開発をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた、ビスマステルルの研磨を次年度に実施することとしたため、これに関する経費の一部を次年度に使用することとなった。 ビスマステルルの研磨については、ビスマステルルの毒性に鑑み、物質・材料研究機構での従来の研磨環境での作業の安全性を確認する必要があり、実施が遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
ビスマステルルの研磨条件についての検討は行っており、次年度に行う。このため、次年度使用額は、ビスマステルルの研磨にかかわる経費の一部として使用する計画である。
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