研究課題
神経細胞の個々のシナプスへの興奮性入力による興奮性シナプス後電位(EPSP)と抑制性入力による抑制性シナプス後電位(IPSP)は時に可塑性を示しながら統合され、電気緊張電位として伝わり活動電位を発生させる。シナプスでの統合をより深く理解するためにはイオンの動きと膜電位の可視化が重要となる。IPSPは一過性に細胞内クロライド濃度上昇を起こすが、これまでIPSPによるクロライド上昇は可視化されていない。本研究は、IPSPの可視化を目指し、高感度で高い反応性を備えた赤色の新規蛍光クロライドプローブを開発し、抑制性のシナプス可塑性(iLTP)を可視化により解明することを目的としている。28年度は、クロライド結合タンパク質をクロライド感受性素子として活用しながら、我々が独自に改変を行った赤色蛍光タンパク質RFP のcDNAを基にしてクロライドプローブのプロトタイプを遺伝子工学的に多数試作した。試作したプローブは大腸菌に発現させてタンパク質精製し、蛍光分光光度計および分光光度計を用いてクロライド応答性や光学特性を解析した。クロライド濃度変化に伴う蛍光変化が認められたプローブは培養神経細胞に発現させ、GABA受容体やグリシン受容体の刺激での蛍光応答の大きさを指標として細胞での性能を評価した。現在得られつつある有望なプローブは、PCRを用いたrandom mutagenesisによりそのcDNAに変異導入を行い、改良を進めている。
2: おおむね順調に進展している
クロライド濃度変化に伴って蛍光変化を示すプローブの開発がおおむね順調に進んでいるため。
最終年度は、これまでの研究成果に基づき、より反応性に優れたクロライドプローブの開発を継続し、モデル動物の抑制性シナプスに応用することで抑制性のシナプス学習過程を検出できるか検討する。
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