研究実績の概要 |
本研究は、CRISPR/Cas9を用いてマウス小脳全域のプルキンエ細胞特異的に特定の遺伝子をノックアウトし、登上線維のシナプス刈り込みに関わる分子のスクリーニング系の確立を目的とする。RNA干渉によるノックダウン法と比較して、ノックアウトによるより正確な表現型の解析や小脳全域の異常によって誘発される行動の解析を実現することを目指している。本年度は、マウス小脳全域のプルキンエ細胞にCRISPR/Cas9 系を導入するために、子宮内ウイルスインジェクションまたは子宮内エレクトロポレーションを用いて、小脳全域への導入効率が高いウイルス・プラスミドコンストラクション・プラスミド導入時期・刺激条件等を検討した。ゲノム編集によるノックアウト効率を高めるため1遺伝子に対して3箇所をターゲットとしたレンチウイルス用・エレクトロポレーション用のベクターを構築した。従来のSpCas9に加えて、オフターゲットを抑えるためにeSpCas9(Slaymaker et al., 2016)を発現するベクターも作製した。プラスミド導入時期は胎生期E10, E11, E12を試験し、子宮内エレクトロポレーションは2点電極による小脳の左右両側導入と3点電極による両側導入を試みた。その結果、全般的に子宮内ウイルスインジェクションと比較して、子宮内エレクトロポレーションによるプラスミド導入効率が高く、現在のところ、2点電極により2種のプラスミドベクターをE11にエレクトロポレーションした条件が最も効率よく小脳全域にCRISPR/Cas9 系を導入できることが判明した。
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