ほ乳類の脳は無数の神経細胞が複雑なネットワークを形成することによって機能する。したがって、神経回路から構成要素である単一の神経細胞を選んでその性質を理解することは、ネットワークの構造と機能を理解する上で重要であり、本研究課題はその目的のための汎用性の高い方法論を構築することを目的として行われた。昨年度に引き続き、これまでに開発した単一細胞標識システムの汎用性をさらに高めるための改良を行った。様々な技術的な難しさからこれまで研究が遅れていた、新生仔期のマウス大脳皮質の深層にある神経細胞を主要なターゲットとして研究を遂行した。具体的には、生体大脳皮質の中における神経細胞(特に樹状突起)の形態をより詳細に解析できるシステムの構築を試みた。生体脳での神経細胞の観察は、通常の方法により蛍光蛋白を発現させると細胞体の蛍光が明るすぎるため、比較的蛍光の弱い樹状突起形態の解析が困難になることがしばしばある。この問題を克服するために蛍光蛋白質の改良を行い、それとスパースラベリングとを組み合わせた。それにより、細胞体近傍に存在する樹状突起の形態をより詳細に解析することが可能となった。本研究で開発してきた単一細胞解析技術は、我々が主にターゲットとしている新生仔期のマウスの大脳皮質に限定されない幅広い動物の脳、あるいは脳以外の部位に幅広く使用することが可能な極めて汎用性の高い技術である。一部論文として発表できていない部分に関して、できるだけ早期に発表できるように努める。
|