研究課題/領域番号 |
16K14560
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
深田 正紀 生理学研究所, 分子細胞生理研究領域, 教授 (00335027)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 光科学 / LOV2 / ABHD17 / 酵素 / シナプス |
研究実績の概要 |
シナプスは神経活動に応じて情報伝達効率を変化させる可塑的性質を有し、高次脳機能発現を担う。シナプスは構造・機能的に特殊化したシナプス前、後膜(PSD)からなり、これら膜ドメインの神経活動依存的な改変がシナプス可塑性の本態であると考えられている。しかし、PSDの改変とシナプス可塑性の因果関係は未だ十分に実証されていない。これまでに、私共はパルミトイル化脂質修飾関連酵素(パルミトイル化および脱パルミトイル化酵素)の細胞膜局所における動的活性変化が、PSD構築の基盤的機構の一つであることを見出してきた。本研究では、パルミトイル化酵素や脱パルミトイル化酵素の活性を光遺伝学的に人工操作する手法を開発し、PSD構築を時空間的に改変することを試みる。さらに、PSDの構造的・質的変化とシナプス機能、シナプス可塑性との関連を明らかにすることを目指す。今年度は、PSD-95の脱パルミトイル化酵素としてABHD17A、17B、17Cを同定することに成功した(Yokoi, Fukata Y et al, J Neurosci, 2016)。また、ABHD17を海馬神経細胞に過剰発現させると、PSDにおけるPSD-95やAMPA受容体が激減し、スパインの数も減少することを見出した。続いて、ABHD17に様々なパターンでLight-Oxygen-Voltage sensing (LOV2)ドメインを融合させたコンストラクトライブラリーを作成した。また青色光の照射依存的に2量体化を引き起こすことができるCRY2とCIB1コンストラクトも複数作成し、光照射依存的に特定の細胞内領域にABHD17をリクルートすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光操作の対象となるPSD-95脱パルミトイル化酵素としてABHD17を同定し、神経細胞レベルでその生理機能を確認することができた。また、ABHD17に対し、LOV2やCRY2-CIB1を融合させたコンストラクトを作成し終えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に作成したLOV2やCRY2-CIB1融合を融合させたコンストラクトの光感受性評価を進める。具体的には、代謝ラベル法により、パルミトイル化酵素活性を評価する。また、海馬神経細胞にPSD-95-mCherryとともに発現させ、光刺激依存的に、PSD-95クラスターが消失するか否かを検討する。これらの評価を踏まえた上で、光操作によるPSD構築改変がシナプス機能に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に新たに見出したPSD-95脱パルミトイル化酵素(ABHD17A, 17B, 17C)の機能解析を迅速に進めるために研究計画を見直したため、未執行額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
新規酵素群(ABHD17A, 17B, 17C)に関する神経細胞培養やイメージングに関わる消耗品として(100万円)、執行する予定である。
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