研究課題/領域番号 |
16K14563
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
戸島 拓郎 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 研究員 (00373332)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 成長円錐 / 軸索伸長 / 軸索ガイダンス / 機械刺激 / カルシウム |
研究実績の概要 |
神経回路形成過程の神経軸索の先端構造体である成長円錐は、細胞外環境を感知し自身の運動性を変化させることで軸索を遠隔の標的まで牽引する。研究代表者を含む多くの研究者により、成長円錐の運動性をコントロールする細胞外因子として、軸索ガイダンス因子等の生理活性物質が多数同定され、これらに応じた成長円錐の運動制御機構(走化性)の理解も長足の進歩を遂げている。その一方で、成長円錐の形態が基質の硬さにより影響を受けたり、成長円錐の前進運動に伴って軸索に張力が発生するといったように、発生期の軸索は様々な機械的刺激を受けている。本研究課題では、発生期の軸索や成長円錐が細胞外からの力を感受し形態変化に至るまでの一連のシグナル伝達経路を同定し、神経回路形成における機械情報の重要性を明らかにすることを目標とする。 平成28年度は、神経軸索の形態・運動性に対する基質の硬さの影響を解析した。柔らかいゲル上にニワトリ胚脊髄後根神経節細胞を培養し、その軸索の長さを計測したところ、硬いガラス基質上の神経細胞と比較して有意に短い軸索を持つことが明らかになった。また、ゲルや組織中の神経細胞を3D観察するための方法を検討した。高感度カメラとイメージインテンシファイアを搭載したスピニングディスク式共焦点顕微鏡を用いて、透明化試薬処理したサンプルを観察し、ゲル深部において十分なXYZ解像度を持った抗体染色像を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度当初に所属機関の異動があったが、本課題の遂行のための研究環境のセットアップがほぼ完了し、成長円錐に対する機械刺激の影響が明らかになりつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、軸索や成長円錐でのメカノトランスダクション機構について順次解析を進める。具体的には、成長円錐内のカルシウムシグナルや、その下流で惹起される細胞内分子機構を解析する。機械刺激に対する短期的応答としては、細胞質中に既存の細胞骨格や細胞内膜小胞をリクルートし再編する可能性が高いが、軸索の伸展は膨大な量の形質膜成分の拡大や、細胞骨格、細胞質成分の増加をも伴う現象であるため、中長期的には遺伝子発現や新規タンパク質合成が惹起される可能性が高い。この転写・翻訳を誘発するためのシグナル系についても、まずは転写阻害剤・タンパク質合成阻害剤等を用いることから順次検証して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ予定通りの予算執行であったが、ごくわずかの端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(消耗品の購入)に充てる予定である。
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