研究課題
てんかん外科病理診断をしていると、“薄切した通常の組織標本の観察では病変を正しく評価できないのではないか”、と思われる症例を少なからず経験する・皮質異形成における軽微な細胞配列の乱れを評価する場合などがこれに当たる。本研究は、最近報告された、脳を透明化する革新的技術を応用し、神経細胞の配列を3次元で捉える新規標本観察法を創出し、てんかん原性脳病巣における病態形成基盤を明らかにすることを目的とした。内側側頭葉てんかん患者から採取された側頭葉外側新皮質を検索対象とし、以下の研究を実施した。(i) <CUBIC試薬を用いて脳組織の透明化を図る> ヒト脳組織は齧歯類等のそれと比較し、脂質の含有割合が極端に高いなど、従来の透明化試薬では本研究の目的を達成出来ないことが明らかとなった。そこで、数百種類の化学物質を対象に、ヒト脳の透明化に最適なプロトコールを探索した。(ii) <細胞標識方> ヒト脳組織は自家蛍光が極端に強い。そのため、これを完全に除去することは困難であった。そこでこの特徴を逆手にとって、自家蛍光発色構造物を捉え、次いでこれを化学的に消退させる方法を見出した。更に、光学顕微鏡標本で一般的に使用される染色法:HE染色、K-B染色に匹敵する、蛍光一般染色試薬を見出した。これにより、例えばアルツハイマー病の老人斑が可視化できる事が明らかになった。(iii) <免疫組織化学染色> 透明化後の脳ブロックに免疫組織化学染色を施し、抗体が浸透し、蛍光分子を標識した二次抗体で抗原を可視化出来る条件検定を進めた。この様にヒト脳組織の新規標本観察法の開発を進めた。本方法論の意義は、てんかん診療上のそれにとどまらない。神経変性疾患や脳腫瘍などを対象とする神経病理学において、イノベーションを創出する可能性のある方法論を創出した。
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