研究課題/領域番号 |
16K14578
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
等 誠司 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (70300895)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カニクイザル / 神経変性疾患 / アルツハイマー病 / 筋萎縮性側索硬化症 |
研究実績の概要 |
神経変性疾患の動物モデルとして、様々な遺伝子改変マウスが開発されてきたが、脳のサイズや構造的類似性、高度な機能などの面から、霊長類疾患モデルの有用性は高い。本研究は、アルツハイマー病(AD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)をターゲットに、患者で報告されている遺伝子変異をカニクイザルに導入し、神経細胞における早期の病変の検出を試みることにより、AD/ALSの病態の理解を深めることを目的とする。遺伝子改変サルの報告は世界的にも少数に留まっており、本研究でAD/ALSモデルサルの作製に成功したならば、世界に向けて大きなインパクトを与えられる。加えて、新たな治療薬が考案された場合に、前臨床試験に用いることができ、新規治療薬開発や安全性の確保に大きな意義があると考えられる。 遺伝子改変サルの作製には、① レンチウイルスを用いた遺伝子導入と、② ゲノム編集技術によるカニクイザルゲノムの改変、の2種類を予定している。平成29年度には、GFPトランスジェニックサルの作製に成功した①の技術を応用し、CAGプロモーター下にSwedish変異をもつヒトAPP遺伝子を発現させるトランスジェニックカニクイザルを作製した。これまでに4頭の作製に成功し、胎盤などの組織を用いてトランスジーンの発現を確認している。一方、家族性ALSの原因遺伝子の1つであるFUS遺伝子についても、カニクイザルES細胞を用いてFUSタンパク質の発現を確認した。②については、カニクイザルES細胞を用いてCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を応用し、FUS遺伝子変異による家族性ALSで報告されている変異が導入できるかどうかを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Swedish変異をもつヒトAPP遺伝子のトランスジェニックカニクイザルの作製に成功している。また、ALSモデルザル作製のためのベクターやウイルス作製も進んでおり、本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までにヒトswAPP遺伝子トランスジェニックサルの産仔が得られたので、非侵襲的解析を開始する。ただ、MRIなどの検査にも全身麻酔が必要になり、幼弱期は麻酔に対して感受性が高いため、少なくとも6ヶ月齢以降に行う。また、不慮の死が発生した場合は、脳や多臓器での遺伝子が導入された細胞(動物全体ではキメラの可能性がある)の割合を測定し、同時に皮膚線維芽細胞よりiPS細胞を樹立して、swAPP遺伝子の発現量を計測する。さらに、海馬や内側嗅野を中心に、大脳皮質におけるswAPP遺伝子の発現やタンパク質の定量、Aβの沈着や神経細胞の脱落の有無などを詳細に検討する。神経細胞に細胞死が起きていないかを、TUNEL法やcleaved Caspase-3の免疫染色を用いて解析する。もし細胞死が確認された場合は、その部位の生存している細胞をマイクロパンチ法で採取し、遺伝子発現パターンやエピゲノム修飾パターンを解析する。 野生型および変異をもつヒトFUS遺伝子を発現するレンチウイルスを作製し、受精卵に感染させてトランスジェニックサルを作製する。また、効率的にtruncation変異を起こすことができるガイドRNA配列が同定できているので、それを用いたCRISPR/Cas9法をカニクイザル受精卵に適用する。胚盤胞のステージまで培養系で発生させ、変異導入の効率やFUS遺伝子の発現量変化などを解析する。
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