統合失調症は複数の遺伝要因と環境要因の相互作用によって発症する複雑性疾患であり、非常に異種性の高い疾患群としての性質を持つ。そのため、共通した神経生理学的指標として確立しているプレパルスインヒビションに着目し、その神経回路機構の解明を目指している。また、遺伝-環境相互作用によって行動異常を示す統合失調症モデルマウスのプレパルスインヒビション低下に関連する神経回路の制御異常と分子病態を調べ、さらには同定した特定神経回路の制御によってプレパルスインヒビションの正常化、ひいては社会性低下などの行動異常の是正を試みることによって、統合失調症の神経回路に着目した病態解明と治療法開発につなげることを目的としている。 複数の統合失調症遺伝モデルマウスに対して、環境要因として思春期における社会的孤立を加え、成年期に行動を観察すると、プレパルスインヒビション低下を含む認知行動や社会行動において行動異常を見いだした。これに対して、大脳基底核の直接路と間接路のそれぞれに特異的な神経活動制御を行い、プレパルスインヒビション低下を含む認知行動や社会行動における行動異常に是正ができないか検討を進めている。DREADD法を用いて、大脳基底核の直接路あるいは間接路に特異的に神経活動を誘発することをc-fos抗体による免疫組織化学染色法により確認できた。今後、DREADD法を用いた特異的な神経細胞活動制御による精神疾患モデルマウスのプレパルスインヒビション障害の是正を試みる。
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