研究課題/領域番号 |
16K14582
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
松村 暢子 帝京大学, 医学部, 助教 (30317698)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | microRNA-96-5p / ゲノム編集 / 骨髄間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
脳内の抗酸化物質であるGSHの減少は神経変性を進行させると考えられており、GSH維持機構の促進は神経保護手段として期待できる。当研究室におけるGTRAP3-18遺伝子欠損マウスの研究から、GTRAP3-18は神経細胞のGSH産生に関わるシステイントランスポーターのEAAC1の作用を阻害してGSH産生を抑制することがわかり、さらにGTRAP3-18の発現上昇とEAAC1の発現抑制に同時働くmicroRNAであるmiR-96-5pを見いだしてきた背景がある。このmicroRNAの遺伝子を欠損するゲノム編集は神経細胞の抗酸化環境を促進することが期待される。本研究では、骨髄由来間葉系幹細胞にmiR-96-5pを標的にしたゲノム編集を行うことにより、GSH産生が増加した酸化ストレス抵抗性の神経細胞を分化誘導することと、その技術を利用して神経変性疾患モデルマウスから採取した骨髄由来間葉系幹細胞から移植後の生存能力の高い神経細胞を作ることを目的とする。本年度は、骨髄幹細胞の増殖に適した血清の選択などを経て、C57BL/6系統マウスに適した骨髄由間葉系幹細胞の培養方法を確立した。免疫細胞染色により幹細胞のマーカータンパク質を発現した間葉系幹細胞が培養されていることを確認した。一方で間葉系幹細胞から神経細胞に分化する際に必要な分化誘導因子mouse Notch1 intracellular domain (NICD)の発現ベクターを構築した。現在は培養した間葉系幹細胞の多分化能の解析を進めると同時に、NICD発現ベクターをトランスフェクションすることによる神経細胞分化誘導に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定では、GTRAP3-18遺伝子欠損マウスから採取した骨髄由来幹細胞が、野生型マウスと比べ抗酸化能力が高いことを確認するところまでを目標としていたが、C57BL/6系統マウスの骨髄由来間葉系幹細胞に適した培養条件の確立や、神経分化誘導などの諸条件の確立にとどまっている。この理由には、骨髄細胞の増殖に適する新しい血清の確保が必要であったことや、幹細胞の強い接着性が継代時の回収率を低下させ、質の安定した良い幹細胞集団がなかなか得られなかったことが挙げられる。また、当初外部からの入手を考えていた分化誘導因子NICDの発現ベクターに望まない36塩基配列の挿入が見つかり、ベクターを再入手し、GFP融合NICD発現ベクターを再構築する必要があったことも挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
C57BL/6系統のマウスはBalb/C系統に比べ、骨髄間葉系幹細胞の増殖速度が遅いという論文報告があり、培養が難しい系統のようである。しかし、GTRAP3-18遺伝子欠損マウスや、後に使用する神経変性疾患モデルマウスにはC57BL/6系統が用いられているので、C57BL/6系統マウスでの最適条件を選ぶ必要がある。具体的には2回継代までの細胞が適しており、これを諸実験に用いることにする。29年度以降に行う予定であるゲノム編集も野生型マウスの骨髄由来幹細胞の2回継代細胞を用いて予定通り開始する計画である。28年度に行う予定であったGTRAP3-18遺伝子欠損マウスの骨髄由来幹細胞における抗酸化能力の解析についても2回継代細胞を用いて行い、29年度の課題と共に並行して進めることにより遅れを挽回する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入すべき試薬の価格が2,516円より高額であったため、使用しきることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の予算と合わせて試薬の購入に使用する予定である。
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