研究実績の概要 |
本研究は骨髄幹細胞にmiR-96-5pを標的にしたゲノム編集を行うことで、EAAC1を介したシステインの取り込みを促進し、グルタチオン(GSH)の産生増加により酸化ストレス抵抗性を高め、生存能力を高めた幹細胞を作ることが目標である。この幹細胞は移植後の生着率が高く持続的な神経再生をもたらすと期待される。これまでの研究で、C57BL/6Jマウスから採取した骨髄細胞から、骨髄幹細胞に特異的に発現するCD29とCD90に陽性で、脂肪細胞へ分化する能力を持った骨髄幹細胞の初代培養系と、それを神経細胞に分化誘導する系を確立した。この骨髄幹細胞に対してゲノム編集を行う際、問題となっていた遺伝子導入効率の低さは、エレクトロポレーション法を採用することにより50%近くまで高めることに成功した。一方、細胞内GSHレベルの評価法として、GSH検出蛍光試薬のCMFDAを骨髄幹細胞に取り込ませ、CD29, CD90陽性細胞の蛍光強度を共焦点レーザー顕微鏡を用いて検出し集計することを試みた。しかし、初代培養幹細胞の特性として、対象となる細胞は大きさや形が異なる細胞集団であり、マーカー蛋白の発現強度も一様でなかった。免疫組織染色を用いて幹細胞を同定し、細胞ごとのCMFDA蛍光強度を集計する方法では客観的な解析が困難であることが分かった。対応策として、フローサイトメトリーを使ってCD29とCD90の共発現を指標に骨髄幹細胞集団の枠を定め、集団のCMFDA蛍光強度を測ることでGSH量を網羅的に解析する系を確立した。解析方法の問題点は解決した。これらの方法を用いてゲノム編集後の骨髄幹細胞とゲノム編集骨髄幹細胞から作成した神経細胞のGSH産生レベルを評価し、酸化ストレス下でも生存能力の高い移植用細胞の作成を目指す。
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