SUMO化はタンパク質機能を制御する翻訳後修飾の一種であり,近年,がんや神経変性疾患などとの関連も指摘され,注目を集めている。タンパク質のSUMO化状態は,リガーゼによるSUMOの付加とペプチダーゼによる除去のバランスによって決定されると考えられてきた。しかしながら申請者らは,酵素活性を持たないことが予想されるSENP5の新規アイソフォーム(SENP5 short)のクローニングに成功した。すなわち,酵素活性に依存しないSUMO化動態の制御が行われている可能性がある。本研究課題ではこの可能性を検証し,さらに,この新規SUMO化動態制御機構がシナプス機能に及ぼす影響を解明することを目的とした。 前年度の研究から,SENP5 shortが内在性の脱SUMO化経路と競合することが明らかになった。すなわち,「SENP5 shortによる酵素活性に依存しないSUMO化動態制御機構」の存在を立証することができた。平成29年度は,SENP5によるシナプス伝達への影響を明らかにするため,ライブイメージングを用いた解析を試みた。プレシナプスにおける開口放出の可視化には,SypHyを用いた。SypHyを10日間培養した皮質神経細胞に電気穿孔法を用いて導入し,全反射照明蛍光顕微鏡によって脱分極刺激に応じた蛍光強度の増大を捉えることに成功した。続いてSENP5 long/short-IRES-mCherryベクターを作成し,電気穿孔法による導入を試みた。しかし,導入効率が低く,SENP5の影響を解析するには至らなかった。SENP5は胎生期にも発現していることから,神経突起発達への影響の解析を試みた。マウス胎児の皮質神経細胞にSENP5に対するshRNAベクターを導入し,3日間分散培養したところ,コントロールshRNA導入群に比べて突起数が少なく,また,軸索への分化も抑えられることが明らかとなった。
|