研究課題/領域番号 |
16K14586
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
榎戸 靖 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 細胞病態研究部, 室長 (90263326)
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研究分担者 |
岸 宗一郎 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 病理学部, リサーチレジデント (60595833) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / コレステロール / Akt / mTOR / マイクロRNA / スフィンゴ脂質 / ライソゾーム病 / 白質障害 |
研究実績の概要 |
近年、中枢神経系の軸索ミエリン化を司るオリゴデンドロサイト(OL)の分化成熟異常やミエリン形成異常は、自閉症や知的障害を伴う神経発達障害で広く見られる共通病態の一つとして、そのメカニズムの解明に大きな関心が寄せられている。こうした中、我々は、ミエリン代謝異常を特徴とする2つのライソゾーム病、ニーマン・ピック病C型(NPC)ならびにクラッベ病(KD)で見られるOLの分化成熟異常とミエリン形成異常の機序解明とその治療応用を目指し、解析を行ってきた。 今年度の研究実績としては、まず、昨年度までに明らかにした、NPCマウスOLの分化成熟異常をレスキューするマイクロRNA(OL分化関連マイクロRNA)が、それらの細胞内コレステロールの異常蓄積を改善することを見出した。驚いたことに、このマイクロRNAは、KDマウスOLの分化異常や細胞内サイコシンの異常蓄積も改善した。次に、NPCマウスやKDマウスのOLの細胞膜上の脂質ラフトの機能が低下していることを細胞レベルで明らかにした。特に、脂質ラフトに存在するフォスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)が減少していたことから、これが、2つのライソゾーム病マウスのOLで共通して見られるAkt/mTORシグナルの活性低下の原因と考えられた。以上の結果は、リソゾームによるコレステロールやガラクトシルセラミドの代謝が、脂質ラフト→Akt/mTORシグナル→OL分化関連マイクロRNAの発現上昇、を制御することで、OLの分化・ミエリン化制御が行われていることを示唆している。 今後、マイクロRNAが制御する2つの疾患で特異的に発現変動する遺伝子群を網羅的に明らかにする等により、ライソゾーム病で見られる脳白質障害の分子病態解明とその治療法開発のさらなる具体化が可能になることが期待される。
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