前年度までにC57BL/6Jの初期胚を用いて,候補遺伝子の発現量変化を解析した結果,現在のところ5遺伝子が8細胞期から桑実胚期にかけて強く発現することがわかったので,本年度はこれらの遺伝子を1細胞期から発現させるための遺伝子導入系の開発を行った。前年度までに開発した発現マーカーを効率的に導入するための方法として,当初プラスミドDNAをマイクロインジェクションにより導入を試みたが,多くの遺伝子を導入するには多くの時間と労力を費やすこととなったため,エレクトロポレーションによって1細胞期胚に導入する方法の開発を試みた。エレクトロポレーションに耐性が高いと思われたICR胚を用いて実験を行なった。2本鎖DNAをエレクトロポレーションによって導入できたという報告はこれまでに1報のみがあるが,追試された例がなく,電圧,通電時間,通電回数などの条件検討を独自に行い,安定的に10-20%程度の胚でマーカー遺伝子の発現が確認できる条件を決定した。次に,gRNAを発現するプラスミドを導入してゲノム編集ができるかどうか調べたが,現在のところ,確実にゲノム編集できる条件の確定には至っていない。今後,さらに効率よくプラスミドDNAを導入するための条件検討が必要であると考えられた。また,8細胞期胚の培養を行い,浮遊培養によって増殖させられる条件を見出した。これらを用いて,接着培養よりもより初期胚の状態に近い条件が作り出せることが期待された。
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