研究課題/領域番号 |
16K14597
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松井 秀彰 新潟大学, 研究推進機構超域学術院, 准教授 (60710853)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / アフリカメダカ |
研究実績の概要 |
申請者はパーキンソン病が老化と強い関連があることに注目し、アフリカメダカを解析することにしました。アフリカメダカはアフリカのモザンビークの池に棲息します。そこでは短い3ヶ月の雨期の後の長い乾期には池の水が干上がります。アフリカメダカは長生きする必要がありません。なぜなら乾期には水がなくなるため必ず死ぬからです。“長生きする努力=老化の抑制”をするぐらいであれば、むしろ短い雨期の間に子孫(乾期を耐える卵)を確実に、文字通り“必死”に残すことを優先すべきでした。そのためアフリカメダカは進化の過程で長寿やアンチエイジングが正の選択圧として働かず、脊椎動物で現在最も短命(3~5ヶ月)になったと考えられています。さらにわずか1~3ヶ月の加齢で、臓器の萎縮、運動能力の低下、認知機能の低下、脊柱彎曲、癌の発生頻度の上昇、テロメアの短縮、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼの上昇など、老化の様々な兆候を示します。
申請者はこの老化が抑制されない魚、アフリカメダカ、において加齢以外なんら特別な処置なしに、ヒトパーキンソン病に酷似した病変が進んでいくことを見いだしました。すなわちアフリカメダカは加齢依存性にドパミン・ノルアドレナリン神経の変性を示し、αシヌクレイン陽性の凝集体病変は脳幹脊髄または腸管自律神経から全中枢神経へ連続的に進展を見せました。さらにαシヌクレインを遺伝的にノックアウトすると、加齢依存性のドパミン・ノルアドレナリン神経の変性が改善されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
老齢のアフリカメダカがパーキンソン病に罹患していること、ならびに疾患発症機序にも迫りつつあり、当初の計画以上の広がりを見せている。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は腸内における炎症や腸内細菌を制御することで、パーキンソン病の開始を制御できるのではないかと考える。この仮説はいきなりヒトで検証することは難しい。というのは腸内に異常がある段階では、まだ全く神経症状を発症していないからである。しかしアフリカメダカで検証することは容易である。アフリカメダカにおいて腸内細菌を無菌化あるいは低菌化することで、末梢におけるリソソーム機能の低下を防ぎ、もって加齢により発症するパーキンソン病の病変を改善するかどうか検討する。すでにいくつかの小型魚類で無菌の魚は作製されており、卵を次亜塩素酸で滅菌し、飼育水および餌も滅菌し、なおかつ培養細胞と同じレベルの扱いをすることで無菌化をはかる。餌の滅菌は栄養価の低減につながる危険があり、そのために正常に育たない場合は、完全な無菌ではなく低菌状態を目標とする。マウスと同様に、アンピシリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、ネオマイシンの4剤を飼育水に混合することで、低菌状態を作り出す。微生物培養による増菌の有無の確認、および16S rDNAユニバーサルプライマーを用いたPCR法 による微生物由来核酸の検出、これらにより無菌あるいは低菌の評価を行う。無菌あるいは低菌魚は3ヶ月齢においてコントロールと比較し、神経細胞死や凝集体に差があるかどうか検討する。
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