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2016 年度 実施状況報告書

脂肪細胞を分別的に集積させる手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K14599
研究機関国立遺伝学研究所

研究代表者

高田 豊行  国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (20356257)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード疾患モデル / 脂肪蓄積
研究実績の概要

申請者は、日本産モロシヌス亜種由来のMSM系統の染色体を一本ずつB6系統の遺伝的背景に置換したマウス亜種間コンソミック系統群を使用して、エネルギー代謝に関連した大規模表現型解析を行った結果から、臓器の周りや、体内の特定部位に分別的に脂肪蓄積を制御する遺伝システムが存在する可能性を示した。この「脂肪を分別して蓄積する」遺伝メカニズムを種々の解析により解明する。さらに、研究成果を利用して、脂肪蓄積の体内分布制御法を開発する。
本研究では、まず脂肪蓄積に特徴のある複数のコンソミック系統を対象にして、交配系による遺伝子探索を進めた。脂肪蓄積を指標としたコンジェニック系統の作製やMSMの染色体を2本置換したダブルコンソミック系統の作製を試みた。ダブルコンソミック系統の作製については、生殖腺周囲の内蔵脂肪蓄積量が多い染色体9番置換コンソミック系統を軸にして、これを当該脂肪蓄積量の少ない3番、11番および15番置換コンソミック系統にそれぞれ交配し、得られた産仔をB6とMSMのゲノム多型をマーカーにしたタイピングによりモニタリングしながら系統作製を行っている。これについては、染色体9番および15番をMSM型ホモにもつ個体が得られ、目的とするダブルコンソミック系統の1種類が完成間近である。また、染色体9番:3番置換ダブルコンソミック系統についても、あと一歩での完成が見込めるところまで来ている。しかしながら、染色体9番:11番置換ダブルコンソミック系統については、繁殖が困難であるため、コンジェニック系統を作製するか、F1個体の解析に切り替えるか検討中である。これ以外にも、各種の脂肪組織アーカイブを対象としたトランスクリプトーム解析を開始し、発現量に差のある遺伝子の検出を行っている。その他、トランスクリプトーム解析やメチローム解析に使用するための組織の収集と保管についても行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究初年度は、まず脂肪蓄積に特徴のある複数のコンソミック系統を対象にして、脂肪蓄積を指標としたコンジェニック系統の作製や、ダブルコンソミック系統の作製を行った。ダブルコンソミック系統については、当初目的の3種類のうち、染色体9番:15番置換ダブルコンソミック系統については、目的とするMSM型染色体をホモにもつ個体が得られ完成間近である。また、染色体9番:3番置換ダブルコンソミック系統についても、あと一歩での完成が見込めるところまで来ている。H29年度はこれら完成間近のダブルコンソミック系統を使用した各種表現型解析を展開する。一方、染色体9番:11番置換ダブルコンソミック系統については、繁殖に関する問題が原因でダブルコンソミック系統の作製が困難なことが判明しつつあるため、ダブルコンソミック系統作製過程で得られる組換え体を利用して、コンジェニック系統作製に切り替えるか、染色体9番および染色体11番置換コンソミック系統の交配により得られるF1動物を解析に使用するか検討する。その他、脂肪蓄積に注目した複数コンジェニック系統の作製と表現型収集を進めた。脂肪蓄積やエネルギー代謝に重要な組織の遺伝子発現情報を参考にして、コンソミック系統の脂肪組織における遺伝子発現解析を開始した。その他、トランスクリプトーム解析やメチローム解析に使用するための組織の収集と保管についても行った。全体としては、計画にやや遅れはみられるものの、H29年度のダブルコンソミック系統の作製によって、最終的には着実な進展が図れるものと期待している。

今後の研究の推進方策

脂肪蓄積表現型に特徴のあるコンソミック系統を対象に、F1動物とコンジェニック系統、ダブルコンソミック系統の作製、表現型収集、遺伝子発現解析を前年度から継続して進める。作製した交配系統を材料として、脂肪およびその蓄積に重要な機能を持つ組織の遺伝子発現解析を実施する。複数のダブルコンソミック系統が完成間近のところまで来ているので、作製した系統を今後の解析に利用したい。遺伝子発現解析については、脂肪蓄積表現型に特徴のある複数のコンソミック系統を対象にして、関連する遺伝子の発現動態観察を継続する。発現量に差のある複数の遺伝子のバリデーションを行う。各部位の脂肪組織におけるクロマチン修飾状態の解析およびメチローム解析等については、費用対効果を考えて、全ゲノムあるいは特定ゲノム領域を対象とした研究の実施を検討する。B6とMSMのゲノム多型に関する各種の情報を利用して、脂肪蓄積変化に関わる表現型を対照にして、B6系統と比較した場合に発現が変動する遺伝子群を網羅的に探索する。リスト化された表現型の原因となる候補ゲノム多型情報を基に、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集技術等により遺伝子改変動物を作製し、表現型の変化を解析する。表現型の変化が観察できれば、これら動物を分別的な脂肪蓄積が制御可能な実験動物として確立する。

次年度使用額が生じた理由

作製予定の3種類のダブルコンソミック系統のうち、染色体9番:15番置換ダブルコンソミック系統、および染色体9番:3番置換ダブルコンソミック系統が完成間近であるため、若干時間がかかっても、当初予定したダブルコンソミック系統を使用した研究を展開することで、申請通りの研究ができると考えた。そのため、一部の遺伝子発現解析やサンプル収集に関わる試薬を購入するための経費を次年度に繰越した。

次年度使用額の使用計画

繰り越した経費は、上述したダブルコンソミック系統の作製状況に応じて、遺伝子発現解析やサンプル収集に関わる試薬等の購入に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 日本産野生由来マウス系統MSM/Msを用いた多因子肥満症の遺伝解析2017

    • 著者名/発表者名
      高田豊行、城石俊彦
    • 学会等名
      第31回日本糖尿病・肥満動物学会 年次学術集会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2017-02-10 – 2017-02-11
  • [学会発表] エネルギー代謝表現型の亜種間差に関わる遺伝子発現動態の探索2016

    • 著者名/発表者名
      高田豊行、近藤伸二、矢坂 拓、阿部貴志、清澤秀孔、鈴木 穣、豊田 敦、藤山秋佐夫、城石俊彦
    • 学会等名
      日本遺伝学会 第88回大会
    • 発表場所
      三島
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-10
  • [学会発表] マウス野生由来系統群「ミシマバッテリー」のゲノム解読と 体質関連遺伝子探索への利用2016

    • 著者名/発表者名
      高田豊行、福多賢太郎、野口英樹、豊田敦、山﨑由紀子、藤山秋佐夫、城石俊彦
    • 学会等名
      第63回日本実験動物学会総会
    • 発表場所
      川崎
    • 年月日
      2016-05-18 – 2016-05-20

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公開日: 2018-01-16  

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