前年度(2017年度)の所属先移動により、移管したトランスジェニックラットの繁殖とエクソソーム実験環境の整備を引き続き行った。本年度は、外部委託を利用しラット羊水エクソソームのプロテオーム解析を実施した。妊娠14日目の発育段階にある羊水を採取し、超遠心分離によってエクソソームを含めた細胞外小胞顆粒を単離した。粒子解析装置による品質評価後、可溶化と非可溶化(インタクト)の2種類に分けたプロテオーム解析を委託した。同じ確度で同定されたタンパク質は非小胞顆粒成分の可能性があり、可溶化処理でより上位に同定されたタンパク質は小胞内包タンパク質あるいは膜抗原と考える。 その結果、およそ640個のタンパク質が検出され、エクソソームマーカー(Alix、TSG101、CD9)を上位に含んでいた。血清エクソソームで検出されるタンパク質の発現パターンとは異なり、さらに血清エクソソームでは検出されないタンパク質の存在から、羊水エクソソーム優位な抽出物とみなした。胎児因子や胎盤因子として知られるタンパク質以外に、神経に関わるタンパク質が存在した。 今後の研究計画として、神経・グリア細胞を中心とした培養(in vitro)の系を用い、検出された羊水エクソソーム(タンパク質)の胎児発育への関与を検証する予定である。
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