研究実績の概要 |
平成28年度は、システムの根幹となる、目的遺伝子の発現に伴って制御される「発現検出ユニット」の調整を行った。目的遺伝子の発現変化(プロモーター活性の変化)に伴い、ONまたはOFFのいずれかの状態のみをとり、可能な限り「中間的」な状態にならないよう、様々な効率のマイクロRNAやその標的配列などを適切に組み合わせ、相互排他的な制御を行うユニットを完成することができた。その有用性の実証を兼ねて、がん幹細胞特異的に活性を持つと報告されているSORE6プロモーター(Tang et al, Stem Cell Reports 4:155-69, 2015)のON/OFFに伴いGFP、RFPがそれぞれ発現する遺伝子構築を作製した。これを乳癌細胞に安定導入すると、がん幹細胞」の性質を持つ細胞群においてGFPが発現する一方で、そうでない細胞群では自動的にRFPが発現することを、実際に確認することができた。 並行して、integraseを用いたフリップフロップ機構の作製にも取り組んだ。高効率で組換え反応を起こすことが知られている幾つかのintegraseのcDNAを人口遺伝子合成等によって調製し、その発現に伴って標的配列に挟まれた部位が反転することを確認した。また、システム全体に用いる蛍光タンパク質の候補について、蛍光強度や安定性、細胞内における凝集体の形成など、使用に際して影響すると考えられる様々な性質を比較し、適切と思われるものを幾つか選定した。さらに、桁上げ機構の作製にも取り組み、転写制御因子のcDNAやそれにより制御されるプロモーターなど、大部分の構築を完了することができた。
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