研究実績の概要 |
平成29年度には、前年度に作製した第二世代の架橋選択ベクターをレトロウイルスベクターを用いてマウスES細胞のゲノムに網羅的かつランダムに挿入し、ベクター挿入部位における切断-融合-架橋変異(Breakage-Fusion Bridge, BFB)の人為的誘導を行った。その結果、この第二世代ベクターが設計時に意図した通りに機能し、BFBが誘導された細胞を選択的にエンリッチさせて回収できることが確認された。次に、これらのBFB誘導ES細胞をクローンごとに単離し、個々のベクター挿入部位の同定を行った。その結果、BFBの起点となるベクターの挿入部位の分布には、染色体構造上たいへん興味深いと思われるいくつかの特徴が見出されることが分かった。そこで、この知見を検証するために、我々は単離クローンの数をさらに100クローンほど追加して、詳細な解析を現在行っているところである。また同時に、ベクターのゲノム挿入部位のサンプル数を増やす目的で、BFB誘導後のES細胞集団をバルクとしても回収し、次世代シークエンサー(MiSeq)等を用いたベクター挿入部位の網羅的探索を行っている。なお、上記で単離されたクローンの一部に対しては、染色体検査などの細胞遺伝学的解析も併せて実施し、本ベクターシステムの導入によって生じたゲノム構造変異の全体像を明らかにしようとしている。また、上記で単離されたクローンの中から典型的なものを選んで、新学術領域「先進ゲノム支援」の支援のもと、次世代シークエンサー(HiSeq)による全ゲノムシークエンス解析を行い、構造変異解析ツール COSMOS等を用いたゲノム構造変異の解析を行った。現在、これらの実験データを集約して分析するとともに、その成果を原著論文の形で発表する準備を進めているところである。
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