研究課題
平成29年度では、野生型マウス(WT)とMHC class I分子ノックアウトマウス(β2m KO)を用いて実験を行った。WTの骨髄をβ2m KOに移植し、骨髄由来の抗原提示細胞(APC)はMHC class I分子を発現するが、腫瘍内血管内皮細胞(tEC)は発現しない骨髄移植キメラマウスを作製した。マウス白血病細胞株であるEL4および卵白アルブミン(OVA)を発現するEL4(EG7)をマウスの背部皮下に移植し、OVA特異的細胞傷害性T細胞(OT-1)が腫瘍組織内へ浸潤する程度をWTと比較した。その結果、EG7へ浸潤するOT-1の数は骨髄移植キメラマウスよりもWTで多いことがわかった。一方、EL4へのOT-1の浸潤数に有意差は見られなかった。これらのことからtECによる抗原提示がOT-1の腫瘍組織内浸潤を促進した可能性が示唆された。次にOT-1による腫瘍退縮の程度を骨髄移植キメラマウスとWT間で比較した。その結果、EG7においては骨髄移植キメラマウスよりもWTで腫瘍の成長がより抑制された。一方、EL4において有意差は見られなかった。これらのことから、tECが提示したOVA抗原を認識することでOT-1の腫瘍組織内への浸潤が促進され、腫瘍退縮の程度が亢進されたと考えられる。平成28年度には「抗原認識による細胞傷害性T細胞(CTL)の腫瘍組織内浸潤促進メカニズム」の存在を支持するデータを得た。平成29年度では、tECによる抗原提示が上記メカニズムに関与する可能性を示した。固形腫瘍組織内へCTLを積極的に浸潤させる一つのメカニズムが明らかとなったことで今後の抗腫瘍免疫療法の更なる改良が期待される。またtECによる抗原提示を促進する物質「X」を担癌マウスに投与することで、腫瘍退縮の程度が亢進することがわかった。現在、物質「X」の特許出願を進めている段階である。
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Kidney International
巻: 93 ページ: 599-614
10.1016/j.kint.2017.09.017.