研究課題
EBウイルスは古くより多種のヒト癌への関与が示されているがその癌化メカニズムの詳細は不明な点が多い。本研究ではEBウイルスによる細胞不死化・癌化はRUNX3遺伝子上流に形成されるスーパーエンハンサーによりRUNX3遺伝子の発現が過剰に誘導されることが原因であるという仮説を次の3実験を行うことで証明し、多くのEBウイルス関連腫瘍の治療薬開発へつなげることを目指した。1. スーパーエンハンサー特異的阻害剤JQ1による細胞増殖抑制:EBウイルス陽性リンパ芽球様細胞株GM12878や複数のEBウイルス陽性B細胞リンパ腫細胞株においてJQ1は強力な増殖抑制効果を示した。また、同様にEBウイルス陽性NK/Tリンパ腫に対しても著名な細胞増殖抑制を示した。2. クロマチン免疫沈降 (ChIP) -シーケンスによるスーパーエンハンサー形成の確認およびJQ1によるその消失:ChIP-PCR簡便法によりエンハンサーの活性化、不活化などの挙動を検討したところJQ1によるその不活化が確認された。これにともないRUNX3 の発現低下も予想通り観察された。同時にc-Mycの発現も低下しており、RUNX3のエンハンサー内にc-Mycの結合サイトも複数みられたため、JQ1存在下ではc-Mycの発現抑制を介したRUNX3の発現低下の機序も同時に存在することが示唆された。3. ゲノム編集手法CRISPR/Cas9法によりスーパーエンハンサー領域を欠失させたときの細胞増殖抑制:RUNX3遺伝子の上流40 Kbより50 Kbにまたがるスーパーエンハンサー領域をCRISPR/Cas9法により欠失させたところ著名なRUNX3遺伝子の発現低下および細胞増殖抑制が観察された。従って、上記の仮説は大筋で正しいことが確認された。本研究助成により得られたこれらの知見を基に今後さらに詳細な分子機序の解析を行い治療法開発につなげてゆきたいと考えている。
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