前年度までにスキルス胃がん細胞と間質線維芽細胞の直接的な相互作用を評価するハイスループットスクリーニング系を確立する目的で樹立した、GFP遺伝子を発現するスキルス胃がん細胞、非スキルス胃がん細胞(44As3-GFP、MKN74-GFP)と、Tomato遺伝子を発現するスキルス胃癌由来間質線維芽細胞CaF37を用いて以下の実験を行った。CaF37-Tomato上に44As3-GFP及びMKN74-GFPを播種し、一定時間培養した後に洗浄し、CaF37-Tomatoに接着して残った44As3-GFP及びMKN74-GFPの蛍光強度をマイクロプレートリーダーにて測定した。このアッセイ系を用いて実験の条件検討を行い、最適な細胞数、培養時間、洗浄の条件を決定した結果、44As3-GFPの蛍光強度がMKN74-GFPの10倍程度高くなった。また他のスキルス胃癌細胞を用いた場合にも同様の結果が得られた。従ってこのアッセイ系により、スキルス胃癌細胞に特有な線維芽細胞との接着能を検出することが可能となった。 さらに藤田保健衛生大学の黒澤博士らが作成した、スキルス胃癌を含む胃癌細胞株の細胞表面に結合する数百種類のファージ抗体クローンを用いて阻害抗体の探索を試みた。各ファージを感染させた大腸菌培養上清を用いて、上記接着アッセイを行ったが、大腸菌培養液が非特異的に両細胞間の接着を阻害したため、このアプローチではスクリーニングが困難であることが分かった。最終年度は特に、両細胞間の接着部位を認識するファージ抗体クローンを細胞染色により選択することを試みた。これまでに特に強い染色強度を持つ抗体は得られていないが、候補となる弱陽性のクローンについてはヒトIgG化を行い、精製したIgG抗体を用いて機能の再評価することが必要である。
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