研究実績の概要 |
癌細胞の特徴の一つとして、細胞表面や分泌される糖蛋白の糖鎖構造の変化が良く知られている。例えば、腫瘍マーカーとして汎用されているSLX/CA19-9(膵癌、大腸癌など)、AFP-L3分画(肝細胞癌)、PSA(前立腺癌)では、いずれも糖鎖にフコースが付加された血中抗原が測定されている。申請者らは、癌細胞(膵および大腸癌)が14C-Fucoseを積極的に摂取するとともに、培養清中にフコシル化蛋白を短時間で放出することを最近見出した(PLoS One, 2012; JNCI, in press)。一方担癌患者では、尿中フコース濃度が有意に増加していることが報告されているが(Clin Chem 36:474-6, 1990)、その形状など詳細は不明である。本研究では担癌患者の尿からグライコミクス技術を用いてフコシル化低分子オリゴ糖を検出することで、新たな簡便な癌の存在診断法を開発することを目的とした。 まず初発および再発の膵癌、胃癌、大腸癌患者を対象とし臨床情報を集積した。同時に同患者の尿、血漿および組織検体の採取を行った。それらの採取検体における糖鎖精製および解析を行い、健常人および担癌患者の尿で有意差を認める複数のGlycan候補が見つかった。各種細胞株における糖鎖精製および解析を行うも、vitroでの検出は困難であり、検出法は今後の検討課題であった。In vivoにおける尿中のGlycanは担癌患者のBiomarkerとして有用であった。
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