研究課題/領域番号 |
16K14625
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
田岡 万悟 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (60271160)
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研究分担者 |
泉 友則 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00261694)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | RNA / シュードウリジン / 質量分析 |
研究実績の概要 |
シュードウリジン(5-ribosyluracil、Ψ)は、転写後RNA修飾によって生成される唯一の質量不変のヌクレオシドである。本年度は、RNA中のΨの直接的決定のための新規な質量分析(MS)ベースの方法を開発した。この方法は、衝突誘起解離MSによって生成されたΨ特異的二重脱水ヌクレオシドアニオン(m/z 207.04)の正確な測定によってΨを含むRNAを検出し、Ψのヌクレオチド配列中での位置を決定するLC-MSの方法である。本年度はまず、Ψを含むRNAとウリジンを含むRNAを複数合成し、Ψ特異イオンの出現をLC-MS/MS解析で確認した。また、Ψ特異イオンとRNA量の検量線を作成し、定量的な再現性を確認した。十分な精度(誤差10ppm以内)で観測することで、Ψを含まないRNAは全く検出されないことを明らかにした。この方法を適用することにより、実際に生体から精製した標準的なsnRNA中の既知のΨをすべて同定し、U5およびU6 snRNA中の未知の2つのΨを発見した。この方法によって、ピコモル量以下のRNA中のΨの直接的な解析が可能であることを明らかにした。これに加え、Ψを含む合成RNAを使って、RNA内でのΨの位置情報を取得するためのスキームを作り、RNA内に複数のウリジンが存在する場合でもΨの配列上での位置を特定できる方法として完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学合成したΨを含むRNAからプロダクトイオンm/z 207.04が得られることを確認し、さらに多様な配列をもったRNAから、その検出と定量が可能なことを見いだした。実際に生体から回収した試料でこの方法がワークすることも確認することができている。また、この結果を論文として出版した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒト細胞からリボソームRNAやtRNAを調製し、構築した方法でΨが含まれるRNAの位置を確認する。さらに複数回解析して分析系の安定性を評価し、疾患に関連した細胞を分析してΨマップを作成して、疾患とRNA中のΨの相関を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、本研究に関連する学内資金が潤沢にあったため、研究の遅延がない状態でありながら、経費の残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、海外の細胞バンクから様々な初代培養細胞やがん細胞を購入して分析する予定がある。特にRNA転写後修飾病の一種と目される先天性角化不全症の細胞は国内で入手が難しいため、海外からの取り寄せが必須。そのための細胞分譲・購入資金として次年度使用額は利用する予定である。
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