研究課題/領域番号 |
16K14636
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
小倉 潔 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主任研究員 (70233492)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腫瘍増殖抑制 / 足場非依存的増殖 / ESCRT |
研究実績の概要 |
ESCRTはESCRT-0, -I,-II, -IIIから構成され、ユビキチン化タンパク質を細胞質から小胞体内へ輸送する多小胞体形成能、Wnt-シグナル伝達を担っている。HGS(O14964) は、STAM (Q92783) とそれぞれのコイルドコイル領域 (HGS/CとSTAM/C) を介して結合することにより、ESCRT-0を形成し、ESCRTを構成する。 代表者はHGSの研究から、HGSが発がん因子・がん特性の増悪化因子であり、さらに、HGSのコイルドコイル領域(HGS/C)はがん特性抑制因子として機能することを発見した。HGS/Cを高発現させたがん細胞は、細胞培養基質上では、親細胞株と遜色ない増殖能を示すが、超低接着基質上や軟寒天培地中、ヌードマウス皮下では増殖できない。 HGS/Cはがん特性である足場非依存的増殖能だけを抑制した。さらに、HGS/Cを構成するオリゴペプチドを検索し、足場非依存的増殖能を抑制するOP10-11を見出した。OP10-11はマウス尾静脈投与によりCOLO205細胞のヌードマウス皮下での腫瘍増殖を抑制した。このように、HGSやESCRT-0は、がん特性である足場非依存的増殖能だけを抑制することのできる腫瘍増殖抑制剤の分子標的となり得る。そこで、本研究では、HGS/CとSTAM/Cの結合阻害を指標とする分割蛍光蛋白システムを用いて、ESCRT-0を分子標的として、ESCRT 活性-Wntシグナル伝達-足場非依存的増殖を阻害する低分子化合物を探索することを目的とした。 本研究では、単量体蛍光蛋白質 (mKG) をレポーター分子として利用し、HGS/C領域とSTAM/C領域の相互作用を測定する分割mKGアッセイシステムを構築し、HGS/C領域とSTAM/C領域の相互作用を阻害できる低分子化合物のスクリーニングを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では単量体蛍光蛋白質 (mKG) をレポーター分子として利用した。mKG蛋白質を2つに分割したmKG-N蛋白質とmKG-C蛋白質に、HGS/C蛋白質とSTAM/C蛋白質それぞれ融合することにより、分割mKGアッセイシステムを作製した。HGS/C蛋白質とSTAM/C蛋白質同士が相互作用すると、分割したmKG-N蛋白質とmKG-C蛋白質が近接して、mKG蛋白質が再構成される、その結果、蛍光能を回復することにより、相互作用を蛍光シグナルとして検出できる。この分割mKGアッセイシステムにおいて、HGS/C蛋白質とSTAM/C蛋白質の相互作用を阻害する低分子化合物を検索した。 前年度までに、① mKG-N蛋白質とmKG-C蛋白質、HGS/C蛋白質とSTAM/C蛋白質の融合最適化 mKG-N蛋白質とmKG-C蛋白質、HGS/C蛋白質とSTAM/C蛋白質の融合蛋白質の配列組み合わせを検討し、mKG-N-HGS/C蛋白質とSTAM/C-mKG-C蛋白質の配列組み合わせを選択した。mKG-N-HGS/C蛋白質とSTAM/C-mKG-C蛋白質をカイコ系により合成し、以後の研究に用いた。② 分割mKGアッセイシステムの最適化 アッセイプレート、アッセイ容量、スクリーニング化合物量の最適化を行い、一次スクリーニングアッセイ系を構築した。 ③この一次スクリーニングアッセイ系を用いて、当研究所所有の既存薬ライブラリーのスクリーニングを開始した。 今年度に入り、一次スクリーニングアッセイ系の感度低下の問題が発生した。調査の結果、本格的なスクリーニングのために合成したmKG-N-HGS/C蛋白質の不溶化が原因であることが明らかとなった。そこで、カイコ系に代えてコムギ無細胞合成系を用いて、mKG-N-HGS/C蛋白質とSTAM/C-mKG-C蛋白質を再調製し、一次スクリーニングアッセイ系に用いている。
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今後の研究の推進方策 |
① 新規にコムギ無細胞合成系で合成したHGS/C-STAM/C分割mKGアッセイシステムを用いて、当研究所所有の既存薬ライブラリーからHGS/C-STAM/C相互作用を阻害する低分子化合物のスクリーニングを行う。 ② ライブラリーからのヒット化合物をin vitro系、in vivo系において腫瘍増殖抑制効果を検証し、リード化合物を選出する。 1. in vitro系での検証 - Ultra Low Attachment surface plate(ULA-plate)での腫瘍増殖抑制効果の検証 ULA-plateでは足場非依存的増殖能を有するがん細胞しか増殖できない。ULA-plateでのみがん細胞の増殖を抑制させるヒット低分子化合物を選定する。 2. in vivo系での検証 - ヌードマウスXenograftモデルでの検証 in vitro系での検証により、選択されたヒット低分子化合物を尾静脈投与し、ヌードマウス皮下腫瘍に対する腫瘍増殖抑制効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:本年度において、低分子化合物のスクリーニングが遅延したため、ヒット化合物のin vitro系、in vivo系での腫瘍増殖抑制効果検証実験まで進行できなかった。その結果、検証実験におけるin vitro系、in vivo系の研究経費、および、研究成果発表経費が次年度へ繰り越された。 使用計画:繰り越された使用額は、スクリーニング経費、スクリーニングによるヒット化合物のin vitro系、in vivo系での腫瘍増殖抑制効果検証実験経費、および研究成果発表経費として使用する。
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