研究課題
研究代表者等が卵巣癌の細胞表面に高発現する分子として同定したLipolysis-stimulated receptor (LSR)はリポタンパク質受容体として機能することが報告されている。in vitroでLSR陽性卵巣癌細胞株にVLDLを添加すると癌細胞の増殖・生存促進作用が認められた。この作用は培地中のグルコース濃度を低下させるとより促進されたため、LSRは低グルコースなどの癌微小環境条件下においてリポタンパク質による細胞の増殖・生存に関わる因子であることが判明した。さらに、VLDL添加による細胞の増殖・生存促進作用は、研究代表者等が独自に開発した抗LSRモノクローナル抗体により阻害されたことから、LSRを標的とした脂質代謝制御による癌治療の有用性が示唆された。続いて、in vivoでの薬効の解析を実施した。H28年度に開発した、LSR発現が陽性のPDX卵巣癌組織を超免疫不全マウスの皮下に移植したpatient tumor-derived xenograft (PDX) マウスを3系統用いて、抗LSRモノクローナル抗体の薬効評価を試みた。その結果、コントロール抗体と比較して抗LSRモノクローナル抗体は3系統のLSR陽性PDXモデルすべてに対して有意な抗腫瘍効果を発揮した。また、研究代表者等が開発した抗LSRモノクローナル抗体はマウスLSRにも交叉反応を示すが、本抗体を卵巣癌PDXマウスに投与してもコントロール抗体投与群と比較して体重減少は認められなかった。抗体投与後の腫瘍組織を摘出し、免疫組織化学染色法により、卵巣癌の癌幹細胞マーカーを染色した結果、コントロール抗体と比較して抗LSRモノクローナル抗体投与群では癌幹細胞マーカーの減少が認められたため、LSRを標的とした抗体療法が卵巣癌幹細胞にも作用していることが示唆された。今後、詳細な作用を解析する予定である。
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Cancer Res.
巻: 78 ページ: 516-527
10.1158/0008-5472.CAN-17-0910.