研究課題
平成28年度は転写制御型ncRNAスクリーニングのためのレポーター系の構築をおこなった。すなわち、転写活性化に機能するncRNAのスクリーニングのためのtetO配列7コピーと出芽酵母cyc1のTATA配列をG418耐性遺伝子(kanMX)につないだものをゲノムに挿入した株、転写抑制に機能するncRNAのスクリーニングのためのCaMVプロモーター上流にtetO配列3コピーを挿入したプロモーターでura4およびcan1遺伝子を発現する株を作成した。さらにtetO配列に結合するTetRタンパク質(FLAGタグ付き)に既知の転写活性化ドメイン(VP16)および転写抑制ドメイン(Tup11)を融合したタンパク質の発現系を導入し、それぞれのレポーターが予想通り応答することを確認した。次にRNA結合蛋白MS2を融合したTetR-FLAGタンパク質を発現したところこの融合タンパク質が弱いながらも転写活性化能を示すことを見つけた。これはスクリーニングにおいて障害となるため、これを回避する方法の開発が必要である。また、より柔軟性を持たせた系としてCRISPER-dCAS9によりRNAをレポーター上流に導入する系の構築を試みた。この系ではCRISPERのガイドRNAにスクリーニングするRNAを結合させ、dCAS9でゲノムの任意の場所にそのRNAをリクルートすることを試みるものである。モデルとして出芽酵母でdCAS9をCAN1遺伝子上流、あるいはORF内に効率良くリクルートできることができた。分裂酵母において同様の系を構築し、can1遺伝子上流へのdCAS9のリクルートは確認できたが、その効率は出芽酵母の1/10程度で実用上問題があることが明らかになった。
3: やや遅れている
この系で用いるMS2自身が転写活性化能を弱いながらももつことが明らかになり、この活性を持たない系の構築が必要となった。現在その対策を講じているまた、あらたにCRISPER-dCas9系の導入をおこなうことにしたため、そちらの実験に時間を取られている。これらの理由により、当初の予定であったスクリーニングの準備としてのRNAライブラリーの作成に着手できていない。
TetR-MS2融合タンパク質が転写活性可能をもつため、MS2の代わりにMS2と同様に特定の構造をもつ標的配列をもつλNタンパク質を用いる系の構築を試みる。MS2の欠失変異体をスクリーニングし転写活性化に関わる領域を同定し、その領域を欠失した変異タンパク質を用いる方策もあるが、欠失変異がRNA 結合能を保持できるかは全く未知であり、領域の同定にも時間がかかるため、λNのシステムに注力する。CRISPER-dCas9に関してはガイドdCas9とガイドRNAの発現量のバランスが標的サイトへの結合に影響を与えていることを示唆するデータを得ているので、両者の発現バランスの条件検討をおこない、最適条件を決定する。上記二つの系のどちらかが使用可能なレベルに改善されれば、そくざにRNAライブラリーの作成~スクリーニングを従来の予定通りおこなう。
平成26年度研究途上で当初スクリーニング系で用いる予定のMS2タンパク質に予期せぬ性質があり他のシステムに切り替える必要が生じた。そのためにあらたなプライマーなどの予定外の出費が生じる一方、当初予定したRNAライブラリー作成をおこなうことができず一部試薬の購入が不要になり、両者の差額として次年度使用額が生じた。
次年度使用額は前年度行えなかったRNAライブラリー作成に必要な購入に充てる。それ以外は以前の計画通り使用する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件)
Transcription
巻: 8 ページ: 26-31
10.1080/21541264.2016.1246076
Nucleic Acids Research
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