我々は、ジメチル硫酸(DMS)によるin vivoゲノムワイドフットプリント法DMS-seq開発の過程で、DMSによるヌクレオソーム中心の優先的切断という予想外の現象に遭遇した。ヌクレオソーム中心の正確な検出には、ヒストンH4遺伝子の変異体を用いる化学的切断方法が用いられてきた。この方法は一般にマルチコピーで存在するヒストンH4遺伝子の大半を変異アレルで置換する必要があることから、酵母にしか用いられていなかった。一方、DMS-seqを用いればこの問題を回避して、どんな真核生物にも容易に適用可能な方法になり得ると考えられた。 出芽酵母に続いて、分裂酵母へのDMS-seqの適用を行い、化学切断法の結果と比較を行い、両者がよい一致を示すことを確認した。更に、ヒト線維芽細胞IMR90への応用もおこなった。ヌクレオソームのフェージングが明確になる領域として、CTCFやRAD21の結合部位周辺のデータを解析したところ、MNaseとDMSの切断頻度が逆位相の振動を示すことが確認されて、ヒトでもDMSがヌクレオソーム中心を優先的に攻撃することが確認された。70株以上のヒト不死化リンパ球から取得されたMNase-seqデータの解析から予測されたヌクレオソーム中心位置とDMS-seqの切断ピークが一致することを確認した。これらの結果から、DMS-seqがヌクレオソーム中心検出の新たな手法になり得ることを示した。 これら一連の実験の対照実験として行った精製DNAに対するDMS-seqの詳細な解析から、ヌクレオソーム中心となる配列が内在性のDMS高感受性を示すことが明らかになり、DNA形状のパラメータが独特のパターンを示すことも判明した。これらの結果は、DNA形状がヌクレオソーム配置のための隠されたコードとして働く可能性を示唆する興味深い結果と思われた。
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