研究課題/領域番号 |
16K14647
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴木 志野 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特任主任研究員 (10557002)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛇紋岩化反応 / メタゲノム / メタトランスクリプトミクス |
研究実績の概要 |
マントル起源の超塩基性岩が隆起している場合、地下圏において、地球表面の水と反応し、蛇紋岩に変質する。この反応は、蛇紋岩化作用と呼ばれている。この岩と水の反応により、水素、メタン、カルシウムイオン、および水酸化イオンなどが生成、放出されるため、この反応が活発に起きている水圏は、自然界で最も高いpHを示し(pH=12)、また、非常に還元的(Eh=-600mV)であるという特徴を持つ。この環境は、生命にとって、非常に極限的であり、代謝が困難であると考えられ、実際、ゲノムデータからも、そのエネルギー代謝が予測できないものも多く存在する。 これまで、岩と水の化学反応により作り出される還元的エネルギーが支える地下生命圏については、ほとんど研究例がない。よって、本研究では、米国カリフォルニア州にあるThe Cedarsにおける蛇紋岩化作用が起こっている場所を拠点として解析をおこなった。平成29年度は、The Cedarsにおけるより、より小さい細胞の回収を目指した高精度なサンプリングを行うとともに、回収したサンプルをもとに培養、遺伝子発現解析などを順次進めた。平成30年度も引き続き、その解析を継続中である。本研究に関連する研究に関し、論文が受理され、少なくとも50以上のメディア媒体で紹介されるに至るなど、国民の大きな関心を得た。また、4つの国際学会を含む7つの国内外の学会において、招待講演を行うなど、科学界でも関心を得るに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究結果から、The Cedarsの蛇紋岩湧水には細胞サイズの小さい微生物が多くいることが示されたため、本年度は50kDaのフィルターにより微生物を濃集し、遺伝子発現解析等に供するサンプルを得た。細胞密度は以前の0.2マイクロメートル孔により回収した微生物と比べ、より高濃度に微生物が回収されたことが示唆されたことから、非常に細胞サイズの小さい微生物が多く存在する可能性が示唆された。現在、微生物培養、遺伝子発現解析などを行い、この環境に生息する微生物の機能推定を行うための解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、これまで取得した地球科学的データや、微生物関連データ(基質代謝実験、培養実験、遺伝子発現解析など)を詳細に解析し、有機的に統合することで、この環境に生きる微生物がどのような基質を利用し、どのように生きているのか、の真理に迫る。平成30年度も、各種解析に、煩雑な作業が必要となってくるため、研究補助員を雇用することで、研究推進を目指す。また、米国との国際共同研究をさらに加速させ、研究をまとめ上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に産休・育休の取得、さらには、他業務での乗船等があり、未使用額が生じていたが、本年度も使用しなかった。また、本年度は、もともと予定した学会等の参加が、招待講演となり、先方から旅費などの提供があったため、さらに未使用額が生じた。これらの未使用額は、平成30年度に研究補助員の雇用や遺伝子解析試薬の購入に使用する。
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