研究課題
外界の様々な環境変化に対する適応反応の中で、B細胞は、抗体(Ig)遺伝子における遺伝子再構成、クラススイッチ、そして体細胞突然変異(SHM)を経て、細菌、ウイルス等の病原体蛋白に反応し、遺伝子変異によって抗体の抗原への親和性を高める。しかしながら、抗原刺激に対するSHM導入の速度、及び規則性については未だ不明である。本研究計画では、Ig遺伝子変異変遷による環境適応メカニズムを明らかにする目的で、ヒトでのウイルス感染過程における関連Ig遺伝子のSHM変遷過程と、抗体親和性を分子生物学的に解析した。CMVUL83のリコンビナント蛋白を作製してCMVUL83反応性B細胞クローンの単離と抗UL83抗体遺伝子のクローニングを行い、塩基配列を決定することによって、抗体遺伝子レパートリーデータの集積を開始した。一方、健常人ボランティア血清中の抗UL83抗体の解析情報から、抗体遺伝子情報を類推することからもデータ集積を試みた。現在、そのデータ個数を蓄積中である。実際に、CMVUL83のリコンビナント蛋白をバキュロウイルスにて大量調製した。標識したリコンビナントCMVUL83をプローブとして用いて、ヒト末梢血中に存在するCMVUL83結合性メモリーB細胞 、または抗体産生細胞である形質芽細胞 や形質細胞 を、フローサイトメトリーにより1細胞ずつ単離した。さらに、1)RT-PCRによる抗体遺伝子のクローニング、2)293細胞におけるCMVUL83に対するリコンビナント抗体の発現、さらに、3)ELISAによるCMVUL83反応性の同定を行った。最終的に抗体遺伝子の塩基配列により、抗体遺伝子レパートリーを決定した結果、そのSHM導入効率は約20塩基であることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本研究計画の律速段階は、いかに健常人Igデータを集積し、そのベースラインを決定するかにかかっている。日本赤十字社による献血者由来末梢血単核球よりRNAを順次精製し、そのIgデータを集積することが可能となった。したがって、本研究計画の遂行に関して現時点では何ら障害は認められない。
健常人ボランティア血清中における抗CMVUL83抗体のレパートリーを解析するために、リコンビナントCMVUL83を固相化したカラムにて、血清中抗体を吸着させる。その後、限定分解したFab化抗体を質量分析装置に供し、抗CMVUL83抗体IgH鎖の一次構造配列を類推することによって、抗体レパートリーを決定する予定である。さらに健常人ボランティア末梢血単核球より相当するIgH遺伝子を単離し、塩基配列の決定を試みる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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