研究課題/領域番号 |
16K14650
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
安居 輝人 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 感染症制御プロジェクト, プロジェクトリーダー (60283074)
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研究分担者 |
奥崎 大介 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (00346131)
南谷 武春 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 感染症制御プロジェクト, プロジェクト研究員 (00374679)
中村 昇太 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授(常勤) (90432434)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イムノグロブリン / 体細胞突然変異 / 破傷風毒素 / サイトメガロウイルス / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
微生物感染といった外界環境、あるいは自己抗原等の生体内環境に対する獲得免疫応答において、B細胞は抗体(Ig)遺伝子の再構成、クラススイッチ、および体細胞突然変異(SHM)といった遺伝子イベントを行うことが知られている。特に病原性細菌、ウイルス等の外来抗原に反応し、繰り返しIg遺伝子変異を経過することによって、それらに対する反応性、結合親和性を高める。しかしながら、抗原刺激によるIg遺伝子変異の速度、規則性については未だ明らかになっていない。本研究計画では、Ig遺伝子変異変遷による環境適応メカニズムを明らかにする目的で、ヒトでの病原微生物感染過程における関連Ig遺伝子のSHM変遷過程と、抗体親和性を分子生物学的に解析した。 ヒト末梢血単核球(PBMC)を単離し、EBウイルス、およびTLR9リガンドによるPBMC内B細胞集団の形質転換株を樹立した。1x107個PBMCあたり、形質転換細胞株を約3000クローンの取得が可能であった。さらにヒトDPT3種混合ワクチンのコンポーネントである破傷風毒素(TeNT)に対して、ELISAを行った結果、15クローンの抗TeNT IgG/IgAを得た。次世代シークエンサー(NGS)を用いてIg遺伝子配列を決定した結果、ほとんどのクローンがIgGサブタイプであり、現在その体細胞突然変異を検討中である。 今回の研究計画において、高効率でヒト由来B細胞形質転換細胞株を取得する方法が確立できた。また、NGSによる包括的遺伝子解析により、短期間でのクローン同定が可能となった。 一方、サイトメガロウイルス(CMV)に対する抗体クローンのIg遺伝子解析を行うために、クローンスクリーニングを行うタンパクプローブが必要である。したがって、CMVエンベロープタンパク複合体(gH/gL/UL128-131)を選択し、そのリコンビナント化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人におけるIgシークエンスデータの集積は、概ね順調に進捗していると考えられる。また病原体タンパク特異的抗体クローンの取得について、H29年度における新規ヒト末梢血単核球形質転換法の確立によって、クローン数の飛躍的な増大が認められた。したがって、本研究計画の遂行に関して現時点では何ら障害はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は病原体に対するIg遺伝子クローンを引き続き取得する予定である。特に、健常人に認められるTeNT、ならびにCMVに代表されるヘルペスウイルスに対する抗体クローンの遺伝子配列を決定する。その上で、突然変異の導入パターンのアライメントを行うことによって、どの突然変異が感染直後に導入されたものか、またどのIgクローンがより成熟して親和性の高いクローンかを判定する。その結果、病原体抗体クローン間の抗体親和性成熟の相違を明らかにする。
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