研究課題/領域番号 |
16K14655
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
新海 創也 広島大学, 理学研究科, 特任助教 (60547058)
|
研究分担者 |
菅原 武志 広島大学, 理学研究科, 特任助教 (60713005)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | クロマチン構造 / フラクタル次元 / 蛍光寿命イメージング / 温度イメージング |
研究実績の概要 |
哺乳類の核内DNAはサブMbの長さのクロマチンドメインを形成していることが、近年の染色体構造捕獲法から明らかになってきた。さらに、その動的なドメイン構造の実相も一分子ヌクレオソーム観察から明らかにされつつある。我々はこれまでにヌクレオソームファイバーによって形成されるクロマチンドメインの数理モデルを展開してきた。さらに、一分子ヌクレオソーム観察との融合研究から、平均的なドメインサイズが数百ナノメートルであることを示してきた。また、クロマチンドメインの凝縮度をフラクタル次元によって特徴付け、ヌクレオソーム動態からフラクタル次元を評価してきた。 本年度は、核内クロマチン構造のフラクタル次元の空間分布を評価するためのイメージング技術の開発を行った。最初に、二種類の蛍光タンパク質を安定的に発現するマウスES細胞株の樹立を行った。当初の計画では、薬剤誘導型プロモーターを利用して、蛍光タンパク質の核内発現量を調整したが、試行錯誤の結果、最終的には、レンチウィルスを用いた導入法によって蛍光寿命イメージングに適した細胞株の作成方法を現在行っている。 解析技術の開発は計画通りに進んでいる。一般的にソフトウェア上で操作する蛍光寿命イメージングでは、大きなデータ量の生データは特殊な形式で格納されており、誰でも使用しやすいグラフィカルインターフェース上で解析が行われる。しかしながら、本研究が目指すフラクタル次元を評価するためのソフトウェア上のプログラムは存在しないため、ソフトウェア上での解析は困難である。そこで、生データから蛍光寿命減衰カーブを抽出し、非線形フィッティングによってフラクタル次元を評価するプログラム開発に取り組み成果を挙げている。 本年度の後半では、観測に適した細胞株の樹立と解析プログラムの向上のサイクルを回しており、核内フラクタル次元イメージング技術を確立する前段階に入ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画よりも、細胞株を樹立して蛍光寿命イメージングをするサイクルが長引いたり、細胞作製方法も試行錯誤したため、少し遅れている。しかしながら、解析プログラムの開発は成功しているので、順次、そのサイクルを早めることによって、平成28年度分の遅れを取り戻すことができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、平成29年度では核内クロマチン構造のフラクタル次元と温度の同時イメージングを行う予定であった。しかしながら、これは前者の技術が確立した後にできることである。そのため、平成28年度の計画が遅れた分を、平成29年度では取り戻す必要がある。遅れの原因は判明しているため、まずはその対処を推進する。同時イメージングに必要な3種類の蛍光物質の性質については、計画通り事前の知識があるので、解析プログラム開発を事前に推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、論文としての発表と、そのための英文校閲、研究協力者への謝金、及び、学会発表のための旅費と参加費を計上していたが、計画が少し遅れていることと、研究協力者の資金が潤沢なために、使用することができなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究の遅れを取り戻すための研究推進と国内と海外での成果発表を拡充することで、差額に対する有効的な使用を図る。
|