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2016 年度 実施状況報告書

土壌-植物-昆虫の境界を突破して種を維持する微生物

研究課題

研究課題/領域番号 16K14662
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

多胡 香奈子  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター物質循環研究領域, 主任研究員 (20432198)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード農薬分解菌
研究実績の概要

これまでに、害虫(カメムシ)へ殺虫剤耐性を付与する殺虫剤(フェニトロチオン)分解菌の畑地での感染ルートを追跡する研究で、カメムシは土壌と植物を介して分解菌を取り込むことを強く示唆する結果を得た。このことは、土壌微生物は土壌だけでなく植物や昆虫の体内にも適応し、住処を移動しながら種を維持している可能性を示している。そこで植物や昆虫は微生物のリザーバーとして機能し、枯死等により微生物を土壌へ還元してその多様性を維持する役割を担うという仮説を立てた。以上から、微生物の土壌⇔植物⇔昆虫の往来を証明し、植物と昆虫を介した土壌微生物多様性維持機構を解明することを目的とした。
研究を行うにあたりまず、野外で殺虫剤を農地に散布すると分解菌が土壌・植物・カメムシに現れるか調べた。ダイズはカメムシの主な住処の1つであることから、ダイズを栽培しつつ、慣行の農薬散布頻度(開花期以降10日~2週間毎)とより高頻度・低頻度の3パターンで散布を行った。開花期以降はダイズ地上部をネットで覆い、その中へカメムシの幼虫を放って飼育した。
その結果、慣行の散布頻度で土壌に分解菌が出現した。これまで知られている野外での分解菌の分離源は、数年という長期間にフェニトロチオンを散布し続けた土壌が知られていたが、本研究では短期間・数回のフェニトロチオン散布で分解菌は土壌に出現することが分かった。また今回の条件では、カメムシとダイズ地上部には分解菌は認められなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今回の実験で、分解菌が野外においても数回の殺虫剤散布で土壌に出現することが明らかになり、予想以上に微生物が土壌で分解能を獲得する確率は高いと思われる。しかしながら、分解菌は植物やカメムシからは見つからなかった。このことから野外で植物体やカメムシへの分解菌の感染はある一定の条件下に限られることが示唆された。一方で実験系が適していなかった可能性も考えられ、実験計画を一部修正する必要があると考えている。以上から研究の進捗は「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

圃場実験は1年に1度しかできないという制限がある。そのためマイクロコズムの実験を行ったり、これまでの関連課題で蓄積されたメタゲノム解析データを使ったin silicoでの検討などを組み合わせることで、研究を効率良く進めることとする。

次年度使用額が生じた理由

本年度はダイズを春から秋にかけて栽培する圃場試験を主として進め、必要なデータも得られた。ただ、この圃場試験に時間と労力を要し、また体調不良も重なったことで、ダイズ植物を用いての室内実験が一部滞ったため未使用額が生じた。
次年度は今年度得られたデータを踏まえ、室内実験やゲノム解析など費用のかかる項目を中心に検討したいと考えている。

次年度使用額の使用計画

次年度は研究計画を効率よく進めるために、室内でのダイズ栽培・農薬散布試験や、これまでに蓄積している、農薬散布圃場などでのメタゲノム解析データを活用し、in silicoで分解菌が土壌や植物体に存在する可能性についての検討も行う。以上により実験とDNA情報のコレクションを使って多角的に研究を進めていく予定である。なおゲノム解析には委託分析が必要であるため高額の予算が必要である。また実内実験を行うために必要な機器・消耗品費として予算を使用する計画である。

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公開日: 2018-01-16  

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