本研究は、単一細胞レベルでのエピゲノム解析を行うための基礎的な要素技術の開発を行うものである。メチルシトシン解析のためのbisulfite-sequencingは、シトシンをウラシルに変換する反応において同時にDNAの切断が起こるため、微量サンプルからの解析は困難である。本研究では個々の細胞をマイクロカプセルに封入した状態でbisulfite反応を行い、さらにPCR増幅などを行う実験系を構築することによって、単一細胞レベルでのゲノムDNAのシトシン修飾解析の手法を開発することを目的としている。これまでもDNAをアガロースビーズに封入してbisulfite処理を行うことで1細胞からの解析効率を向上する手法が提案されているが、アガロースは高温には耐えられないためそのままPCRを行うことはできなかった。またオイル中に分散した液滴中でPCRを行うエマルジョンPCRという手法も用いられるが、水溶液の液滴は溶液交換が困難であるため、単一の反応を行うことしかできない。本研究ではbisulfite反応とPCRを同一のマイクロカプセル中で続けて行う実験系を確立することにより微量のbisulfite法における解析結果がそもそも何分子のDNAに由来していたかが不明であるというこれまでの問題点を克服し、新しいbisulfite法の標準的なプロトコールを構築することを目的としている。そこで本研究ではこれまで多糖類を用いたマイクロカプセル中にDNAを封入し、bisulfite反応を行ってDNAを回収、PCR増幅が可能であることを確認した。さらに、マイクロカプセル生成の手法を種々検討することによりマイクロカプセルの大きさや形状をコントロールすることがある程度可能となった。また、マイクロカプセルに磁気ビーズを添加してカプセルを作成し、容易に溶液置換を行う系を構築した。これらの成果から、微量DNAサンプルから容易かつ効率的にbisulfite反応を行いPCR増幅を行う系の確立に目処を立てることができた。
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