研究実績の概要 |
現在の生命科学発展の基盤となったマウスES細胞を用いたジーンターゲッティング技術において、ターゲッティングベクターと宿主遺伝子の組換えは、細胞の持つ相同組換え(HR: homologous recombination)能を利用している。ジーンターゲッティングにおいて、我々が一般に使うES細胞はオスである。その理由の一つとして、XXの片側のXは脱落してXOになりやすく、germ line に入る確率が低下することが挙げられる。ES細胞は相同組換えの効率が高いと信じられていたが、我々は、これまで樹立されてきたES細胞において、メスES細胞はオスES細胞に比べて相同組換えの効率が極端に低いことを見いだした。その原因は全く不明であるが、我々は性染色体に相同組換えを制御する機能があると考えられる。一方で、これまで樹立されてきたES細胞がバックグラウンドの違う細胞であることがその原因である可能性が否定出来ない。そこで本研究ではまず、同じバックグラウンドでESを新たに樹立し、メスES細胞はオスES細胞に比べて相同組換えの効率が極端に低いかを検証した。 JF1マウスのメスと129bc3マウスのオス交配して、ハイブリッドのオス、メスのES細胞を樹立に成功した。Nanog-2A-GFPを用いて相同組換え効率を解析したが、オス、メスいずれも極めて低く、正確な比較ができなかった。この時、XY(JF1/129)においても標準的なオスのES(J1)の出現頻度から著しい低下が見られ、JF1/129のハイブリッドが起因したと考えられる。ハイブリッドを用いた理由はXOの出現を押さえる為であったが、適切でなかったと考えている。今後は129同士の交配でXX, XYの樹立をシンプルに行い、上記の方法で相同組換え効率を解析する予定である。
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