研究課題/領域番号 |
16K14675
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
正井 久雄 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 副所長 (40229349)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Rif1タンパク質 / クロマチンループ / 核内染色体構造 / 複製タイミング / グアニン4重鎖構造 / 核膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、代表者の発見「Rif1はクロマチンループ構造の形成を介して複製タイミング機能ドメインを規定する」に基づき、Rif1を用いてクロマチンループ構造の人為的改変を介して核内構造を操作し、細胞の機能改変を誘導する新規技法を開発する。又、Rif1はG4構造を形成する配列に特異的に結合することを見出した。Rif1を用いて、染色体の核内配置や高次構築を操作するために、1) 発現レベルを変動することによりゲノム全体のクロマチンループ構造を操作、2) 部位特異的にクロマチンループを形成し、局所的に染色体機能ドメインを操作、の二つのアプローチをとる。 28年度までに、Rif1増産は、核内染色体構造の異常とともに、著しい増殖を誘導する事、脱リン酸酵素PP1の結合には依存しない事、高温37°Cでは阻害されないことを見出した。また、分裂酵母Rif1タンパク質のC端にG4結合ドメインと多量体形成部位があるが、それのみの増産では増殖阻害は観察されなかった。 G4形成配列を特定の部位に導入することによる染色体機能の変換を目指すために、まずG4構造が実際に細胞内で形成されているかを検証するための実験を計画した。I-SceIという18塩基対の制限酵素部位をG4形成配列のループ領域に導入し、G4形成により、一本鎖に変換されるために切断されなくなることを、in vivo および細胞内で確認した。そこでRif1結合G4形成配列を、初期複製起点近傍に導入し、複製タイミングの変化、及び、その近傍のクロマチン構造の変動を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
G4配列を染色体上に人為的に導入し、複製タイミングの変動を指標に、染色体機能改変を誘導する実験で、染色体上にLacOアレイを導入し、染色体の動態を可視化できる酵母株を作製した。この株にrif1の変異実験を行った結果、使用したLacOアレイが不安定で、多くが消失してしまっていたために、染色体動態観察に使用できなかった。これは予期せぬ事象で、もう一度株の構築を行う必要があった。この理由により進歩状況にやや遅れがでた。
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今後の研究の推進方策 |
Rif1の機能ドメインの解明の伴い、G4に多量体として結合しクロマチンループ形成を促進するが、増殖阻害を誘導しない変異体を増産する方法、G4配列を染色体上に人為的に導入し、複製タイミングの変動を指標に、染色体機能改変を誘導する。この際に、染色体上にLacOアレイを導入し、染色体の動態を可視化できる酵母株を用いる。また、最近、超高解像度顕微鏡を用いて動物細胞の染色体の動態解析から、Rif1が染色体の核膜近傍での凝縮度やダイナミクスを制御していることを見出している。さらに、その制御は、Rif1のC端領域に担われている。これらの知見にもとづき、動物細胞においても、Rif1を他の因子と融合し、異なるクロマチンドメインを核膜近傍に誘導構築するなどの実験計画をたてている。
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次年度使用額が生じた理由 |
G4配列を染色体上に人為的に導入し、複製タイミングの変動を指標に、染色体機能改変を誘導する実験で、染色体上にLacOアレイを導入し、染色体の動態を可視化できる酵母株を用いる予定であった。実験を行った結果、使用したLacOアレイが不安定で、染色体動態観察に使用できなかった。そのため、顕微鏡観察に必要な試薬、消耗品の購入を行わなかった。また、共同研究先との研究打ち合わせ、連絡、情報交換に必要な経費を使用しなかった。現在株を作り直しており、完成したら、導入する人工的G4形成配列や、rif1の欠損が染色体の動きに対する影響を詳細に解析する予定である。
この実験は、広島大学の上野勝 准教授と共同で進めており、次年度使用額は酵母株の生育、顕微鏡観察などに必要とされる試薬の購入および、上野博士と研究打ち合わせのための旅費などにあてる予定である。
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