本研究では、我々の発見「Rif1はクロマチンループ構造の形成を介して複製タイミング機能ドメインを規定する」に基づき、Rif1を用いてクロマチンループ構造の人為的改変を介して核内構造を操作し、細胞の機能改変を誘導する新規技法を開発する。又、Rif1はG4構造を形成する配列に特異的に結合することを見出している。Rif1を用いて、染色体の核内配置や高次構築を操作するために、1) 発現レベルを変動することによりゲノム全体のクロマチンループ構造を操作、2) Rif1BSであるG4構造形成を操作することにより、部位特異的にクロマチンループを形成し、局所的に染色体機能ドメインの構築を制御、の二つのアプローチをとる。 29年度までに、Rif1増産は、核内染色体構造の異常とともに、著しい増殖阻害を誘導する事、脱リン酸酵素PP1の結合には依存しない事、高温37°Cでは阻害されないことを見出した。また、分裂酵母Rif1タンパク質のC端にG4結合ドメインと多量体形成部位があるが、それのみの増産では増殖阻害は観察されなかった。Rif1増産による増殖阻害効果においては、主に、クロマチン形態の異常および複製進行の阻害が観察されるが、short spindleで増殖停止(M期停止)する細胞の増加も観察された。 また、G4構造が実際に細胞内で形成されているかを検証するために、G4形成配列のループ領域がG4形成により一本鎖に変換されるために切断されなくなることを利用して、細胞内でRif1BSがG4を形成することを確認した。さらに、G4形成は、ヌクレオソーム形成を阻害すること、転写によりG4形成が促進されることが明らかとなった。転写on/offによりRif1結合G4形成を制御することにより、核膜近傍へのクロマチン局在、クロマチン高次構造及び、複製活性抑制を人為的に制御できると考え、現在、実験的に検証している。
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