研究実績の概要 |
我々はr(GGAGGAGGAGGA)(以下R12)分子をスイッチング素子として活用する事で、カリウムイオンを感知して酵素活性がオフからオンにスイッチするRNA酵素(リボザイム)を創製する事に成功してきた(Chem. Commun., 2015, BBRC, 2015)。今回はHIVのTatタンパク質を捕捉するRNAアプタマーにこの手法を応用する事で、カリウムイオンを感知してTatタンパク質を捕捉する活性がオンになるRNAアプタマーを創製する事に成功した。創製されたRNAアプタマーは、カリウムイオン非存在下では活性構造が形成されない為に、Tatを結合する事ができない。一方カリウムイオン存在下では活性構造が再構築される為、Tatを結合できるようになる。カリウムイオンの濃度の上昇・下降を繰り返すと、創製されたRNAアプタマーのTat結合活性のオンとオフが繰り返して起こる事も確認できた。 R12を2回タンデムに繰り返したr(GGAGGAGGAGGAGGAGGAGGAGGA)(以下R24)分子は、R12が2分子で形成する構造を、1分子のみで形成する事ができると予想される。一分子単独で構造が形成される為、R24が形成する構造はR12が形成する構造に比べて、細胞応用において適用される低いRNA濃度においても、安定に保たれると考えられる。R24の立体構造をNMR法によって決定したところ、予想通りR24は、R12が2分子で形成する構造を、1分子のみで形成できる事が示された。R12とR24に関し、細胞応用の際に想定される低い濃度で細胞に作用させたところ、R24の方がR12に比べて活性構造をより有効に保持している事を示唆する結果が得られた。従ってR24をスイッチング素子として活用したRNAアプタマーは、より有用な分子となる事が期待される。 また生細胞中における核酸の立体構造に関する情報を得るために、生細胞中の核酸のNMRシグナルを観測する事を試み、これに成功した。
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